支配的意見は必ずしも正しくない2014/08/15 06:02

  等々力短信 第248号 1982(昭和57)年4月15日

 米内光政、山本五十六、井上成美といった人々は、その海外体験などを通じ て、彼我の国力差をよく認識していた。 だから、彼らが海相、次官、軍務局 長だった時期、問題になった独伊三国同盟に、海軍は徹底して反対した。

 昭和14年8月8日の平沼内閣の五相会議で、石渡蔵相は米内海相に「日独 伊の海軍は、英米仏ソの海軍と戦って勝つ見込みがあるのか」と質問した。 「勝 つ見込みはありません。だいたい、日本の海軍は、米英をまとめて向こうに回 して戦争するように建造されておりません」と米内は即答している。

 しかし、山本七平さんのいわゆる「空気」によって、日本はあの戦争に突入 せざるを得ない状況になってしまう。 支配的意見や多数決というものが必ず しも正しくないというこの苦い経験を、今、貿易摩擦や行政改革の問題に生か せているのだろうか。