清宮政宏教授の「福沢山脈を引き継ぐ経営者たち」 ― 2020/06/30 06:50
『福澤手帖』185号、清宮(せいみや)政宏滋賀大学経済学部教授の「福沢山脈を引き継ぐ経営者たちについて」を、興味深く拝読した。 清宮さんとは、福澤諭吉協会で早稲田に行った時に、昼食の高田牧舎で同じテーブルになって以来の顔馴染みだ。 論文は、現代に通じる革新性を企業にもたらした経営者として、池田成彬と小林一三の業績と革新性を紹介した上で、その二人から連想される現代の経営者二人を取り上げている。 池田成彬からはサントリーの四代目佐治信忠へ、小林一三からは資生堂の福原義春につなげた着想は、秀逸だと思った。
池田成彬は、三井家の同族経営から専門経営者へ「財閥転向」を進めた、革新的気概を持つ人物である。 佐治信忠は、同じ革新的気概を発揮して、2014年、同族企業のサントリーに、外部からローソン社長を務めた新浪剛史を招聘、経営トップに据えた。
小林一三は、阪急電鉄で、路線沿線の土地を買収し大衆向けの宅地分譲を進め、宝塚の娯楽施設を創り上げ、梅田にターミナル型デパートを開店させ、多くの客を集めた。 小説家・文筆家としての才能も並行して発揮、文化的芸術的な感性・才能を経営に活かした人物だった。 福原義春は、蘭の栽培や写真の趣味を持ち、駒井哲郎のコレクションを世田谷美術館に寄贈しており、「経営とは経済的、文化的、社会的な総合活動」であり、「企業活動は文化を生産している活動」であると言う。
清宮さんは、福沢山脈を今も脈々と引き継ぐ経営者たちは、独自の気概を持って、企業が本来目指さなくてはならないものを長期的な視点や幅広い視点で推し進め、革新性を社会や企業経営にもたらして先導している、とまとめている。
小人閑居日記 2020年6月 INDEX ― 2020/06/30 07:22
柳亭市馬の「猫忠」上<小人閑居日記 2020.6.2.>
柳亭市馬の「猫忠」中<小人閑居日記 2020.6.3.>
柳亭市馬の「猫忠」下<小人閑居日記 2020.6.4.>
家康築城時の江戸城、最古級絵図の新発見<小人閑居日記 2020.6.5.>
家康の江戸城は史上空前最強の城<小人閑居日記 2020.6.6.>
古地図、「入り口を正面に表わす名前の縦書き法」<小人閑居日記 2020.6.7.>
「大元神楽」と「神職神楽等演舞禁止令」<小人閑居日記 2020.6.8.>
「石州神楽」の神がかりと託宣<小人閑居日記 2020.6.9.>
「藍は新月に仕込み、満月に染め始める」<小人閑居日記 2020.6.10.>
「旧暦」…本井英先生「俳句日記」から<小人閑居日記 2020.6.11.>
宮川公男教授の「福澤諭吉の文明論と統計(スタチスチク)論」<小人閑居日記 2020.6.12.>
「実学」(サイエンス)統計学で社会を考察する<小人閑居日記 2020.6.13.>
山内慶太教授の「福澤先生の統計的思考」から<小人閑居日記 2020.6.14.>
杉亨二、大隈重信、明治14年の政変<小人閑居日記 2020.6.15.>
保険会社の創始、明六社の人々と蕃書調所<小人閑居日記 2020.6.16.>
大変だぁ! パソコンがアウトになった<小人閑居日記 2020.6.17.>
「首里城正殿」のペーパークラフトをつくった理由<小人閑居日記 2020.6.18.>
新パソコンを下手下手使い始める<小人閑居日記 2020.6.19.>
何とか使えるようになった新パソコン<小人閑居日記 2020.6.20.>
映画とそれを観た映画館<小人閑居日記 2020.6.21.>
ニュース映画というものがあった<小人閑居日記 2020.6.22.>
ニュース映画専門劇場<小人閑居日記 2020.6.23.>
「初鰹」と「麦の秋」の句会<小人閑居日記 2020.6.24.>
「夏の川」と「花菖蒲」の句会<小人閑居日記 2020.6.25.>
短信 『二十四の瞳』の朗読を聴く<等々力短信 第1132号 2020(令和2).6.25.>
斎藤道三、親子二代の国盗り<小人閑居日記 2020.6.26.>
松永久秀、天下人三好長慶のNo.2<小人閑居日記 2020.6.27.>
近年の研究による織田信長のイメージ<小人閑居日記 2020.6.28.>
明智光秀の前半生を伝える古文書<小人閑居日記 2020.6.29.>
清宮政宏教授の「福沢山脈を引き継ぐ経営者たち」<小人閑居日記 2020.6.30.>
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