棲み家を発見するが、インド人は消え失せた2020/09/18 07:01

 ちょうどその頃、少年探偵団員の始と正一の組は、前から来る7~8歳の男の子が、胸にBDバッチを付けているのを見つける。 BDバッチは小林団長の発案で、この間出来上がったばかりの少年探偵団員の記章、Boy(少年)とDetective(探偵)を模様のように組み合わせて図案化したもの。 男の子が拾ったというので、二人は万年筆型懐中電灯を出し、七つ道具の呼び子でほかの五人を呼ぶと、その道から探し始める。 それはあたかも、七匹のホタルが飛び交わしているようだった。

 地下室では、もう水が1メートルの深さにもなり、緑ちゃんを抱いて小林が立っているのがやっとという状態になっていた。 やがて、水がのどのあたりまで来たので、泳ぎの得意な小林は、緑ちゃんを負ぶうと、泳ぎ始めた。 小林が力つきて溺れてしまうか、水かさが増して、天井まで水が達するか、その危機が迫る。

ちょうどその頃、七人の少年探偵団員はインド人たちの逃走経路を見つけ、洋館に達していた。 裏手に回り、桂正一の肩に二人の少年が乗り、その上の篠崎始が二階の窓から覗くと、二人のインド人がいた。 すぐに、正一の指示で、団員が洋館の前後を固め、始が篠崎家に知らせに走った。 警視庁の中村捜査係長が部下たちを連れて、車で駆けつけるまで20分ほどかかった。 少年たちは、捜査係長に誰も外には出なかったと報告した。

 小林と緑ちゃんは、もう溺れてしまったのだろうか。 捜査係長と警官が、呼び鈴を押すと、ドアが開いて、インド人でなく、30歳ぐらいの日本人の紳士が迎えた。 ここの主人の春木と名乗り、今、警察に電話しようとしていたところだという。 インド人に二階の部屋を貸していたのだが、悪い奴とは知らなかった。 二人とも無事、もう少し僕の帰りが遅くなったら、命を落とすところだった、こちらへ、と案内する。 そこには緑ちゃんがベッドに寝かされ、小林が大人のガウンを着て、みょうなかっこうで椅子に座っていた。 春木が帰ると、雇い人のコックが縛られていて、少年と女の子が地下室に入れられていると話した。 地下室は水であふれ、溺れそうになっていた二人を助けて、警察に電話しようとしていたところだ、と。 二人のインド人は、警察官が洋館の中を隈なく探したが、見つからなかった。 20分の間、少年探偵団員が注意深く見張っていたのに…。

 中村係長は警視庁に報告、東京全都の警察署、派出所に逮捕の手配をしたが、インド人の行方は杳として知れなかった。