「言語力こそ武力なき日本を守る『武器』だ」2011/12/06 04:23

 11月30日、第693回三田演説会、鈴木孝夫さん(慶應義塾大学名誉教授)の 「日本の対外言語戦略について 言語力こそ武力なき日本を守る『武器』だ」 を聴いて、とても面白かった。 鈴木孝夫さんは、年来この持論を主張してき て、自身にも耳タコの問題だけれど、世の中は少しも聞かず、動かない。 寿 命の最後に「白鳥の歌」を歌っていいという、この三田演説会という機会を与 えられたので、「勇躍」登壇したという。 ユーモアと世界文学の教養を随所に 鏤めた熱弁は止まらず、予定を30分もオーバーしたのだった。

 超大国はローマ、「古代」中国(シナ・支那。「古代中国」はない、日本だけが シナを使わない)以来、必ず三本の足をもっている。 ずば抜けた経済技術力と 強大な軍事力、そして広大な地域を支配する言語力の三つである。 日本は超 大国とよくいわれるが、経済技術力のみが強大で、武力を欠き、言語力は日本 語の国際支配力はゼロ、日本からの情報発信もなきに等しい、一本足のカカシ 的な不安定な状態にある。 これをいかにして早急に改めるか、そのため「こ とばこそ武器」という意識革命が必要である。

 鈴木孝夫さんは、日本が安定した国家となるためには、言語力を強化し、せ めて二本足になる必要があるとして、二つの政策を提案する。 第一は大学を 始めとする学校教育での外国語教育の徹底的な見直しに今すぐ着手すること、 第二は日本語の国際普及を図る具体策を早急に確立することである。 明治以 来、漢学から洋学に切り替え、鈴木さんのいわゆる「英独仏トロイカ制」を外 国語教育に導入し、英語を主役に据えた上でドイツ語とフランス語を脇役に置 き、当時の世界の先進西欧文明を効率よく吸収、近代化に成功、欧米諸国に比 肩する国となった。 戦後は高度経済成長をとげたが、1980年台に入ると日本 の社会は内外のさまざまな深刻な問題に悩まされ始める。 その理由は、先進 諸国に追いつき追い越すことだけを国家目標としてきた日本が、目的に達した 途端に目標を失って、目先真っ暗となり、迷走を始めたからである。

 そこで提案の具体策。 従来型の英独仏語に偏った、それも相手情報の受信 と理解に重きを置く外国語教育を、日本からの情報発信に重点を置くものへと 方向転換すること、そして学校で重点的に学ぶべき外国語をロシア語、アラビ ア語、及び中国語、韓国語といった日本の国際的戦略的立場が必要とするもの に転換すべきだと主張したい。

 そして慶應義塾こそ、塾祖福沢諭吉が血の出る想いで苦労して折角学んだオ ランダ語が、当時既に国際的な力を失っていたことを知ったとき、敢然として ためらうことなく新たに英語の学習に挑戦した故事に倣ってもらいたい。 福 沢先生の慶應義塾設立の目的のなかには、新しい日本の指導者を育てることが あった。 現在の慶應義塾の使命は、慶應から世界の指導者を生み出すことに ある。 そのための新しい外国語教育が求められているのだ。 幸い塾にはイ スラーム学(井筒俊彦など)の伝統があるため、アラビア語は他校より充実して いるが…。 現状は、英独仏の講義・教師の数が圧倒的に多い。

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