一琴の「松山鏡」 ― 2012/01/22 04:43
一琴は出るなり、落語研究会は寄席と違って特別だと言う、撮影(録画)の都 合上、前の演者が引っ込んで、出囃子が始まるまでに、一分間の静寂がある、 そして出れば、お客さんの突き刺さるような視線、大好きな落語会だ、と。
今は三面鏡が主で、一面鏡は少ない。 一面鏡だと横顔をチェックできない から…。 ある家具メーカーが、上下からも見られる新型の鏡を開発したそう だ。 12月24日に、七面鏡として売り出す。
昔の鏡は、銅や白銅で、ザクロの実で光らせたという。 鏡のない国の夫婦 が、田舎から浅草見物に出て来て、蔵前通りの「かかみせ」で、おせつが映り、 「おらのカカア見せてる」と、村中の評判になった。 ジンジロさんが翌年、 蔵前通りへ行くと、その店は引っ越した後、看板は「ことしゃ、みせん」、来年 はするかと見れば「しなんしょ」、琴三味線指南所だった。
越後国の松山村、18年間墓参りを欠かさぬ親孝行の正助(42)、領主が褒めお くぞよ、ご褒美を有難く頂け、衣類、田地田畑か、金がいーーか? 正助は、 金くらい毒なものはないので、頂けない。 望みは無理なことと知ってはいる が、改めて、亡くなった父っつぁまに会いたい。 ぜひ、お上の御威光で、と。 難題だ、領主が名主の庄左衛門(45)に、正助は父親に似ておるかと訊くと、そ のまんまです、と。 暫時待て、八咫鏡の御写し(各役所にあった)を出してき た。 正助、箱の中を見てみろ。 フタを取り、そこさ居るのは父っつぁまで ないか、狭かんべ、こっちさ出ておいで、えかく若くなったもんだ。 愛(う) い奴じゃ、その方につかわす、けして余人に見せるなよ。
正助は、鏡を納屋のツヅラにしまって、朝晩挨拶していた。 女房が異変を 気(け)取り、おや何か隠してある、あーら正さん、こんなところに女子(おなご) さんを隠しやがって、そんなまずい顔をして、ひとの亭主を盗るっつうか。
正助が帰って来て、夫婦は大喧嘩になる。 最近、顔色が悪いと思ったら、 こんな隠し事をしている。 何をする、この狸アマ。 大声を出し、叩いたり しているのを、たまたま通りかかった隣村の尼寺のご住職、お比丘尼様が聞い た。 お光坊、正さんがどうした? ツヅラの中に、女子を隠している、と。 いいや、おらの父っつぁまだ。 どら、おらがこの目で確かめて、女子に会っ て意見してやるべ。 ハハハ、お光坊、正さん、心配ねえ、中の女子、面目ね えってんで、もうお坊さんになってる。
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