『思い出のマーニー』で思い出した事 ― 2014/08/16 06:09
宮崎駿さん長篇引退後のスタジオジブリ作品、米林(よねばやし)宏昌監督 の『思い出のマーニー』を観た。 米林監督作品は、2010年に初監督の『借り ぐらしのアリエッティ』を観ていた。
『思い出のマーニー』を観ていて、まず頭に浮かんで来たのは、自分の幼少 年時代のことだ。 以前「脱皮論」という一文を書いた。 書き出しは「幼い 頃よく、品川中延の父の家に今もある、座敷用の大きな堅木のテーブルの下に、 もぐっていた。 その一人だけの空間にいると、何となく安心なのであった。 父はこの内気な次男坊の行く末を案じて、ある時、仕事で知り合った大学の先 生に相談した。 その先生は、心配ないと答え、「内気は個性を守る宝だ」と言 った。 問題の少年は、その一部始終を聞いて、ちゃんと知っていた。 私は、 そういう少年だった。」というものだ。
中島岑夫著『幕臣 福沢諭吉』(TBSブリタニカ)は、自伝の中に大坂から一 家で引き揚げた中津時代、少年期の友人は一人も登場しないことを指摘し、福 沢が孤独で複雑な陰影を持った少年で、福沢の「自由思想」(合理精神、批判精 神)は、中津で「他所者」として自己形成をとげていく過程が生み出したとし たのだった。
「その福沢は、二十五歳で江戸へ出る道中、雲助などひやかしたのを手始め に、江戸で他人付き合いをするうちに、だんだんよくしゃべり、交際も出来る ように、脱皮した。 テーブルの下にいた少年はといえば、その福沢の倍の齢 を重ねたというのに、脱皮したのは、これも皮膚の一部と聞く、髪の毛だけ、 というお粗末である。」というのが、「脱皮論」であった。
わが家の庭に蟻が出ると、家内が嫌って、「アリコロリ」などで退治しろ、と 言う。 だが、私は「のらりくらり」としている。 幼少期、蟻は友達であっ た。 一日中、庭で蟻を見ていることもあった。 サイダー瓶の中に土を入れ、 蟻を沢山入れておくと、巣をつくって行く。 ガラス越しに、巣の様子がよく わかる。 食べ物などを入れると、せっせと巣の中に蓄える。 しばらく忘れ て、放置しておくと、黴が生えて、全滅するという悲劇もあったけれど…。 私 は、「蟻は孤独な幼い頃の友達だからなあ」などと、小さな声で家内に言うのだ。
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