コロナ禍を契機に、対立から協調へ ― 2020/10/05 07:14
元ソ連大統領、ミハイル・ゴルバチョフ(89)さんが「試練としてのパンデミックと21世紀の新思考」と題する論考を朝日新聞に寄せた(9月25日朝刊)。 同氏が総裁を務めるシンクタンク「ゴルバチョフ財団」(本部モスクワ)の知見を結集してまとめられたA4判30ページに及ぶものだそうで、全文の翻訳はなく、「主なポイント」と要旨の記事、解説(副島英樹編集委員)が出ている。 「新思考」については、今年夏刊行された『ミハイル・ゴルバチョフ 変わりゆく世界の中で』(朝日新聞出版)の冒頭でふれているそうだ。 その源流は、科学者らが核兵器廃絶を訴えた1955年のラッセル・アインシュタイン宣言であり、「平和はアメリカ人のためだけではなく、すべての人々のためだ」と述べた63年のケネディ米大統領の演説に影響を受けたことを明かしている。 「新思考」は、人類全体の経験によって育まれてきたのだ。
まず「主なポイント」。 30年前に冷戦終結を可能にした「新思考の理念」は、国際政治の場にカムバックすべき時だ。 対立から協調、普遍的な人間の価値に従って世界形成を。
〇コロナによる財政的な打撃は、政策と思考の非軍事化を進める好機。 軍事支出の10~15%カットの提案も現実的な弾みとなり得る。 そのカット分を医療や教育に。
〇コロナ危機は、米国と中国の二極対立をより深刻化させており、世界政治の展望にとって好ましくない。 ロシアは、この二極対立を防ぐ外交へ舵(かじ)を切るべきだ。
〇コロナ禍は、国際的な格差と貧困の問題を改めて顕在化させた。 南米やアフリカでの感染拡大に警鐘が鳴らされており、国際的な協力体制の再建を急ぐ必要がある。
〇核兵器もコロナも人類への脅威。 1980年代後半、米ソが核軍縮で初めて合意に達した時、人類は呼吸が楽になった。 コロナ後も、人類生存のための共通の責任を認識することで、対立から協調への移行が可能だ。
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