ガリバー強敵隣国の侵攻を阻止 ― 2021/02/08 06:57
ガリバーは敵の艦隊をまさに一網打尽でつかまえる計画を思いついたので、帝にお伝えした。 ブレフスキュ帝国はリリパットの北北東に位置する島で、あいだにはヨーロッパ式で幅800メートルの海峡があるだけだった。 海峡の深さを、経験豊かな船乗りたちに訊くと、真ん中でも2メートル弱だという。 命令を出せる帝の許可状によって、丈夫な綱と鉄棒を用意してもらい、鉄棒を曲げてフック50個をつくり、50本の綱につなぐと、ガリバーは海に入り、急いで海峡を歩き、真ん中の30メートルばかりを泳いで進むと、じきにまた足が底に触れた。 30分もしないうちに、艦隊のいるところに着いた。
敵の兵士はガリバーを見て、すっかり震え上がり、てんでに船から飛び込んで岸に泳いで逃げた。 用意の道具を出して、それぞれの船の舳先にフックを引っ掛けた。 この作業中、敵は何千本もの矢を放ち、それがガリバーの手や顔に刺さって、ひどく痛く、仕事にも邪魔だった。 目をやられたらいけないと気づき、眼鏡をかけた。 やがてフックをすべて掛け終え、束ねた綱の端を手に持って、ひっぱりにかかった。 ところが船はびくともしない。 どれもしっかり錨が下ろされていた。 そこでナイフを出して、錨につながった綱を次々、顔や手に二百本ばかり矢を受けながらひるまず切っていった。 それからフックのつながった綱の束を持ち上げ、敵軍最大の軍艦50隻を悠々と引いて行った。
ガリバーは、危険を逃れると、いったん立ち止まり、手や顔に刺さった矢を抜いて、以前到着時にもらった軟膏を塗った。 潮が少し引いてから、艦隊を引き従え、歩いて海を渡り、無事リリパットの帝港に着いた。 帝をはじめ宮廷の全員が岸辺に立って迎え、上陸したガリバーにその場で、最高の名誉と見なされている称号「ナーダク」を授けた。
およそ三週間後、ブレフスキュ帝国から正式の使節団が訪れ、つつましく和平を乞い、リリパットの帝は非常に有利な条件で講和を結ぶことができた。
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