令和二年『夏潮』「雑詠」掲載句2021/01/01 07:37

 明けましておめでとうございます。 暮も数え日になって、夢のような、垂れ籠めたコロナの暗雲が、パッと晴れ渡るような、嬉しいことがあった。 俳誌『夏潮』令和三年一月号、本井英主宰選「雑詠」の「巻頭」に、つぎの拙句が掲載されたのだ。

残りページ気にしつつ読む良夜かな
浮き上がる一面の白蕎麦の花
クラシックホテルの庭の良夜かな
お隣につい声掛ける良夜かな

 平成19(2007)年8月の『夏潮』創刊以来、毎号欠かさず投句しているが、「巻頭」は初めてだった。 奇跡的な出来事である。 昨年はコロナ感染症の流行で、句会も吟行もままならず、例年1月1日のブログに出している「親潮賞」の応募も初めて出来なかった。 そんなわけで、今年は令和二年の『夏潮』「雑詠」掲載句をご覧いただくことにしたい。

   一月号
金婚の二人になりて秋灯
鈴虫を飼ふ信楽の古火鉢
   二月号
なつかしや柿の畑のある校舎
点々と白く山茶花咲き初めて
   三月号
道の駅山裾にあり初時雨
初時雨阿波の青石濡らし初め
お戒壇めぐりを出でて冬紅葉
   四月号
煤掃を逃れ日比谷の映画館
減反の棚田棚田の草枯るゝ
   五月号
初夢や厠探して見つからず
どっかーんと桶に水仙永平寺
   六月号
浴槽で髭を剃るなり寒の内
アマリリス立つや原始の神のごと
照るや照るや春の光に椿の葉
   七月号
一寸の姫君遊ぶ雛道具
二輪咲く標準木に霙かな
   八月号
疫病の雲垂れ籠めて養花天
コロナ禍や躑躅の白さ眩し過ぎ
   九月号
校庭に野火止流れ鼓草
不要不急か柏餅買ひに出る
蒲公英や舗装から黄を立ち上げて
   十月号
ほほづきの青き実ながめ端居かな
長持唄川面を渡り花菖蒲
自転車の沈下橋行く夏の川
   十一月号
がらがらの銀座通に雲の峰
距離取りし列に並びて氷菓買ふ
ぬばたまの腰までとどく洗ひ髪
   十二月号
通信で買ひし朝顔数咲かず
桃が来て幸水が来て葡萄来る

令和二年2020年の「等々力短信」2021/01/02 07:03

 『夏潮』令和三年一月号、本井英主宰選「雑詠」の巻頭の一句、<残りページ気にしつつ読む良夜かな>の主宰選評「潮騒を聴きながら」には、こう頂いた。

「季題は「良夜」。名月がくまなく照らす夜のこと。作者は今、読書中。読み始めはやや難渋しながら読んだ本が途中から興が乗って、どんどんページが進み、当初予想していた時間よりも早く読了しそうな様子を想像した。昼間から心設けにしていたことだが、今宵は仲秋の名月。天気予報では晴れて全国的に「お月見日和」とのこと。いま読んでいる書物は、何処かで中断して夜はゆっくり「月見を」と考えていた作者だが、思わず読書のペースが上がり、この分では読み終えてから「月見」が出来そうに思えてきたのであろう。家人の話では「月」は、もう大分高く上がっているらしい。中断するか、読了するか、そんな気持ちで、ときどき「残りページ」を気にしている作者の姿が想像できた。作者が「轟亭の小人閑居日記」で有名な読書家であることを考え合わせると、いかにも静かで知的な時間が流れていることも感じられる。」

 有難い「読み」である。 だが「有名な読書家」は、恥ずかしい。 そこで令和2年コロナ禍の中、「等々力短信」や「轟亭の小人閑居日記」で取り上げた本を振り返ってみようとした。 少し始めてみると、本もあるけれど、けっこうテレビ番組も扱っているのだった。 とりあえず、「等々力短信」この一年を見ると、「本」5、「テレビ番組」3、「落語」「俳句」「展覧会」「音楽会」各1と、けっこうバラエティーに富んでいたのだった。

第1127号 2020(令和2).1.25.  お正月の「俳句日記」
第1128号 2020(令和2).2.25. 「柳田格之進」の娘
第1129号 2020(令和2).3.20. 詩人たちの国で
第1130号 2020(令和2).4.25. 武藤山治の先見性
第1131号 2020(令和2).5.25. Stay Homeに時代小説
第1132号 2020(令和2).6.25. 『二十四の瞳』の朗読を聴く
第1133号 2020(令和2).7.25. 戦国時代の日本と世界史
第1134号 2020(令和2).8.15. 無言館と絵画修復
第1135号 2020(令和2).9.25. 戦争を知る政治家がいなくなった
第1136号 2020(令和2).10.25. 民衆が生んだ自由な絵画
第1137号 2020(令和2).11.25. 心の中で「ブラボー!」
第1138号 2020(令和2).12.25. 北岡伸一著『明治維新の意味』

 書名を挙げると、
芳賀徹『桃源の水脈―東アジア詩画の比較文化史』(名古屋大学出版会)
芳賀徹『大君の使節 幕末日本人の西欧体験』(中公新書)
芳賀徹『詩の国 詩人の国』(筑摩書房)
武藤治太『武藤山治(さんじ)の先見性と彼をめぐる群像~恩師福澤諭吉の偉業を継いで~』(文芸社・2017年)
乙川優三郎『喜知次』(徳間文庫)
山本周五郎『小説 日本婦道記』「墨丸」(新潮文庫)
壺井栄『二十四の瞳』(新潮文庫)
北岡伸一『明治維新の意味』(新潮選書)

2020年「小人閑居日記」で取り上げた本など(前半)2021/01/03 07:27

 「小人閑居日記」で取り上げた本などは、どうだろう。 [昔、書いた福沢]シリーズ分は除く。

TBS落語研究会 第618回 1月2日~10日 第619回 2月1日~8日 第620回 3月1日~8日 第621回 5月26日~6月4日(第622回、第623回中止) 第624回 7月17日~28日 第625回 8月17日~26日
藤永貴之第一句集『椎拾ふ』(ふらんす堂) 3月26日
『暮しの手帖』5号(spring 2020/4-5月号) 3月28・29日
呉座勇一朝日新聞連載コラム「呉座勇一の歴史家雑記」関連 3月30日~4月4日
大河ドラマ『麒麟がくる』 4月5日~7日 (中断)6月26日~29日
吉田篤生『慶應義塾大学大学院 SDM伝説の講義』(日経BP) 4月8日~13日
「英雄たちの選択」選、「追跡!土偶を愛した弥生人たち~縄文と弥生をつなぐミステリー」 4月14日~15日
「本井英の俳句日記」ふらんす堂ホームページ (付け句「初御空」の巻)4月24日~25日 (おのがじし・湯治舟)5月12日~14日 (旧暦)6月11日 (「学徒出陣」壮行会の行進曲)11月17日 (入院と文学)12月22日
芳賀徹さんに言及の拙稿一覧 5月3日
武藤治太『武藤山治(さんじ)の先見性と彼をめぐる群像~恩師福澤諭吉の偉業を継いで~』(文芸社・2017年) 5月5日、4月25日
原武史朝日新聞連載『歴史のダイヤグラム』、原武史『昭和天皇』(岩波新書) 5月6日~11日 9月27日
島田雅彦『スノードロップ』(新潮社) 5月15日~22日
『歴史秘話ヒストリア』「福沢諭吉センセイのすすめ」 5月23日~24日
家康築城時「江戸始図」、俵元昭『江戸の地図屋さん』(吉川弘文館) 6月5日~7日
「大元神楽」「神職神楽等演舞禁止令」(『郷土石見』113号石見郷土研究懇話会・2020年5月) 6月8日~9日
「日曜美術館」「アートシーン特別編」「アーティストのアトリエより―染織家志村ふくみ」 6月10日
「福澤諭吉と統計学」(『三田評論』6月号特集) 6月12日から16日
「初鰹」と「麦の秋」の句会 6月24日
「夏の川」と「花菖蒲」の句会 6月25日
『歴史秘話ヒストリア』「ノブナガ万華鏡 英雄とその時代」 6月28日~29日

2020年「小人閑居日記」で取り上げた本など(後半)2021/01/04 08:23

清宮政宏「福沢山脈を引き継ぐ経営者たちについて」(『福澤手帖』185号) 6月30日~7月1日
鶴田真由「ファミリーヒストリー」 7月2日~4日
山中伸弥教授のコロナウイルスについての発信 7月5日
「枇杷の会」6月28日通信句会 7月6日
NHKスペシャル「戦国~激動の世界と日本」 7月9日~11日、13日~16日
浅見雅一『キリシタン教会と本能寺の変』(角川新書) 7月21日~8月4日
千田嘉博教授のNHK文化講演会「戦国の城から歴史を読む」、「ニッポン不滅の名城 明智光秀の城」 8月4日~9日
加藤詔士教授「ヘンリー・ダイアー エンジニア教育の創出」、「お雇い教師」研究の再構成」 8月10日~16日
筒井康隆『現代語裏辞典』(文藝春秋) 8月27日~29日
渡邊大門『清須会議』(朝日新書) 8月30日~9月4日
立花京子『信長と十字架』(集英社新書) 9月5日~13日
江戸川乱歩『少年探偵団』 9月14日~20日
「良夜」と「露草」の句会 9月21日
「グレートトラバース3~日本三百名山全山人力踏破~」 9月22日
朝日新聞「みちのものがたり」「ぐんま県境稜線トレイル」 9月23日
北野勇作『100文字SF』 9月24日
山崎正和さん亡くなる 9月25日~26日
紀州へ、高校卒業テント旅行 9月27日~10月1日
核軍縮を実現し、冷戦終結を導いたゴルバチョフ氏の発言 10月2日~6日
「三田あるこう会」川越 10月7日~10日
「暮の秋」と「甘藷」の句会 10月12日
井波律子『奇人と異才の中国史』(岩波新書) 10月7日~19日
松沢弘陽校注「新日本古典文学大系 明治編」『福沢諭吉集』(岩波書店) 10月16日
高橋三千綱「帰ってきたガン患者」(岩波書店『図書』断続連載) 10月20日~24日
坂野潤治『帝国と立憲 日中戦争はなぜ防げなかったのか』(筑摩書房) 10月26日~11月6日
「三田あるこう会」江の島、E・S・モース著石川欣一訳『日本その日その日』(東洋文庫・平凡社) 11月7日~17日
磯野直秀「矢田部良吉宛の福沢書簡とE・S・モース」(『福沢手帖』48) 11月18日~19日
松崎欣一著『三田演説会と慶應義塾系演説会』(慶應義塾大学出版会)、『福澤諭吉書簡集』(岩波書店) 11月20日~23日
「切干」と「銀杏落葉」の句会 11月24日
日本学術会議の会員任命除外問題、加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社) 11月25日~30日
池澤夏樹朝日新聞連載小説「また会う日まで」 12月1日~9日
「枇杷の会」、「時雨」と当季雑詠の句会 12月10日
「三田あるこう会」千駄木、谷中、上野(谷根千) 12月11日~15日
『小谷直道 遺稿・追想集』 12月16日~20日
「浮寝鳥」と「冬ざるる」の句会 12月21日
再び、「難読地名クイズ」 12月26日~27日
永井荷風『問はずがたり・吾妻橋』(岩波文庫)の『墓畔の梅』 12月28日~31日

年賀状傑作選2021/01/05 07:06

 頂いた年賀状の中で、笑ったもの、感心したものを、いくつか。

「三密の中味は、「集(シュウ)近(キン)閉(ペイ)」だそうです。」(小学校の同級生Cさん)

「コロナで貴重な一年が台無しになったので、お迎えを一年延期するよう神様仏様にお願いしました。」(高校の同級生Oさん)

「言われるまでもなく「高齢者」ですし、私達の行動の全部が「不要不急」だと再確認しました。東京都知事から表彰されそうな程の自粛生活でした。」(大学の同期生Wさん)

「チコちゃんに叱られないよう生きたいと思います。家内も「そだねー」と言っています。」(大学の同期の「ペコちゃん」)

「マスクを不思議そうに見ていた猫も、すっかり慣れて嗅ぎに来なくなり・・・一度フェイスシールドを試してみよう。いつか笑い話にと願っては居るものの、人や物の移動が減ることで空気や水が澄んでいくって。猫曰く、いまさら?」(パソコン通信で知り合ったHさん)

「良いことが『ぎゅう』っと詰まった一年となりますように」(生命保険会社のTさん)