春の彼岸は「牡丹餅」で、「御萩」は秋か?2023/03/23 07:01

 お彼岸なので、自由が丘の蜂の家で「おはぎ」を買ってきた。 先日、テレビで、「おはぎ」は「お萩」だから秋の彼岸、春の彼岸のものは牡丹の「ぼたもち」と言わねばならない、と言っていた。 でも「ぼたもち」というと、何かぼってりした大きめの感じがしていた。

 そこで、『広辞苑』を引いてみる。 「おはぎ【御萩】「はぎのもち」の別称。」 「ぼたもち【牡丹餅】(1)(赤小豆餡をまぶしたところが牡丹の花に似るからいう)「はぎのもち」に同じ。(2)女の顔の円く大きく醜いもの。(3)円くて大きなもののたとえ。」

そこで、「はぎのもち【萩の餅】」も、見てみよう。 「糯米(もちごめ)や粳米(うるちまい)などを炊き、軽くついて小さく丸め、餡(あん)・黄粉(きなこ)・胡麻などをつけた餅。煮た小豆を粒のまま散らしかけたのが、萩の花の咲きみだれるさまに似るのでいう。また牡丹に似るから牡丹餅(ぼたもち)ともいう。おはぎ。はぎのはな。きたまど。隣知らず。萩の強飯(こわいい)。」 季節についての言及はなかった。

ついでに、「きたまど【北窓】(1)北側の窓。(2)(北窓の「つき(月)入らず」を「つき(搗)入らず」にかけた意という)萩の餅の異称。」

さらに、「隣知らず」は「となりしらず【隣知らず】(1)牡丹餅の異称。(嬉遊笑覧)(2)手軽に婚礼をととのえること。(俚言集覧)」

 俳句では、「彼岸」を「春分の日を「お中日」とした前後三日ずつの七日間」といい、秋分の日を中心とした秋のそれは「秋彼岸」または「後の彼岸」という。 歳時記をざっと見たところ、「牡丹餅」や「御萩」は見つからない。 『ホトトギス 新歳時記』に「彼岸詣」という季題があり、傍題として家々では「彼岸団子」を作る、とある。 『合本 新歳時記』(角川書店)では、「彼岸会」の傍題に「彼岸団子」「彼岸餅」があり、<彼岸牡丹餅木曽義仲の墓前かな 下田 稔><海に出づ彼岸の餅を平らげて 中 拓夫>という例句があった。