加藤秀俊さんのニフティサーブ「現代文化研究フォーラム」2023/11/07 06:59

 1963(昭和38)年の『整理学』によって、加藤秀俊さんの魅力にとらえられた私は、加藤さんの本を愛読した。 『整理学』につづく中公新書『人間関係』『自己表現』『情報行動』、『アメリカの小さな町から』『イギリスの小さな町から』『ホノルルの街かどから』の海外生活三部作、そして『生きがいの周辺』『生活考』『暮しの思想』『続・暮しの思想』『独学のすすめ―現代教育考―』といった一連の本である。 そこには、身近なことから説きおこして、生活や人生に豊かなものをもたらし、やがては社会をよりよく変革するような深い内容が、ごくやさしい言葉でのべられていた。 そんなことができるのだと知ったことが、「短信」創刊のきっかけの一つにもなった。 電話で何事もすます世の中に、手紙の楽しみを、なんとか復活させ、広められないか、吸う息もあれば吐く息もある、情報を受け取るだけでなく、素人なりに発信してみようというのが、創刊の趣旨だった。

 かつて「パソコン通信」というものがあった。 加藤秀俊さんは1995(平成7)年の4月から、大手パソコンネットのニフティサーブに「現代文化研究フォーラム FBUNKA」を開設なさった。 名前は硬いが、芸術のような「高級文化」を扱うのではなく、私たちの日常の暮しそのものである「生活文化」が、このフォーラムのテーマになっている。 毎日使っているさまざまな「モノ」や、経験した「コト」を、お互いの体験を通じて歴史的にふりかえりつつ、文化を考える。 社会の激しい変化の中で消えていってしまう庶民生活の記録を後世に残す、そんなフォーラムだという。

 私は1991(平成3)年3月から、パソコン通信ASAHIネットにフォーラム「等々力短信・サロン」を設けてもらい、「等々力短信」を配信していた。 加藤秀俊さんには、郵送の「等々力短信」を初めの「広尾短信」の頃からお送りしていたので、私がパソコン通信をやることも、庶民文化史のようなもの(早い話が落語)に興味を持っていることも、よくご存知だった。 お誘い頂いて、「現代文化研究フォーラム FBUNKA」に参加させてもらった。 「ご隠居」を名乗る加藤秀俊さんが、「八っつあん」こと小沢昭一さんもいらっしゃるこのフォーラムで、落語のことになると、私に話を振ってこられるので、まことに困った。 与太郎みたいに、おたおたしながら、書き込んでいたものだ。

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