「失敗を残せ、目に見える形で」2006/10/22 07:03

畑村洋太郎さんの「だから失敗は起こる」の最終第八回は「失敗を残せ」だ った。 日本航空は今年、安全啓発センターをつくって、520名の死者を出し た1985年8月12日の群馬県御巣鷹山ジャンボ機墜落事故の機体の残骸、原因 となった圧力隔壁、それが壊れて中の空気が外に吹き出して尾翼を吹き飛ばし、 破断した油圧系統の配管、ボイスレコーダー、信じられないような壊れ方をし た客室のシート、乗客のメモなどを展示して、全社員に見学させている。 「失 敗学」では、つらい事故を胸に刻むために、事故を起こした現物を展示するこ とが大事だと考える。 それは社会の共有財産になるからだ。 最悪の時、こ ういうことが起きるというつらい感じを自分のものにして、こういう機械を考 えたり、設計したりするのが、ものづくりの原点ではないか、という。

今から36年前の1970年10月、三菱重工業長崎造船所で製造中の50トンの タービンローターが破裂して吹き飛び、その一部は800m先の海に落ち、死者 4人負傷者61人を出す事故があった。 タービンローター内部の小さな空洞が 原因と解明され、空洞がまったくないタービンが開発されるようになった。 三 菱重工はのちのちの戒めのために、事故から15年経った1985年、史料館を建 て破裂したタービンローターの現物を展示した。 社内には反対意見もあり、 葛藤の末の展示だった。

畑村さんは、展示することで、安全が守られる、という。 情報を発信し続 けることで、最大の警告が出、ある一定のレベルを保ち続ける。 実物を見て、 事故の大変さを知ると、自分が仕事をする時、何をやるべきか、世の中から何 を託されているかを、イヤでも考えるようになる。 日本航空や三菱重工は、 違う産業の違う所で働く人の安全確保の為に、最大の貢献をしたことになる。