『漢方のスヽメ』「東西融合の医療」補遺2009/03/02 07:17

 大倉多美子・出野智史共著『漢方のスヽメ 慶應義塾の東洋医学を支えた人々』 (戎光祥出版)から、2月25日の<等々力短信 第996号>「東西融合の医療」 にスペースがなくて書ききれなかったことを、少し書いておく。

 巻末212頁の資料、近代漢方関連年表、冒頭の福沢が築地鉄砲洲に蘭学塾を 開いた年が間違っていた。 1858年安政5年でなければ慶應義塾が昨年創立 150年にならないので、重大なケアレスミスだ。

 23頁、西洋医学が東洋医学に近づいてきた最大の理由。 人間が自律神経系、 内分泌代謝系、免疫系のトライアングルで、体のバランス、すなわち恒常性(ホ メオスタシス)を保っているということが分かってきたから。 大倉さんの「皮 膚インピーダンス法」は、自律神経系、内分泌代謝系、免疫系をトータルに把 握して、その人のバランスが現在どうなっているか測定できる、という。

 73頁、武見太郎に漢方を薦めたのは、幸田露伴だそうだ。(『武見太郎回想録』)

 133頁末尾の大倉さんの発言、人間はmortalとは分かっていながら、癌患者 が読んだらショックを受けるのではないか、と感じた。 活字にする時は、配 慮が必要ではないか、と。

190頁、慶應の医学部長が講演で生薬を「せい薬」と繰り返したという話、 すぐ、どこぞの総理大臣のことを連想した。