三三の「橋場の雪」2009/03/05 07:28

 三三は、ひょこひょこ出て来る。 「橋場の雪」は、「夢の酒」(「日記」 2005.11.23. 小太郎・2007.3.30.扇辰)に似ている。 商家の奥の離れに若旦 那がいる。 こっそりと幇間の一八が忍んで来て、今日は瀬川花魁と会う約束 だったじゃあないか、向島の「中の上半(?)」の座敷で瀬川が待っている、と 言う。 瀬川は、吉原で全盛の花魁だ。 女房のお花に内緒で抜け出した若旦 那、瀬川の片えくぼのことなど考えている内に、吾妻橋を通り過ぎて、橋場の 渡しの所まで来てしまった。 ちょうどその時、渡し舟が出た。 土手の上の 吹きざらし、寒いと思ったら、雪が降り出し、あたり一面真っ白になってきて、 ユキダオレになりそう。 なのに自分だけ雪がかからない。 傘を差しかけて くれていたのが、お湯の帰りだという女中連れの三十に手がとどきそうないー ーい女で、若旦那が三年前に亡くなった亭主に、よく似ている、近くなのでお 茶でも差し上げたい、と言う。 そこへ、渡し舟が戻って来た。

 「中の上半」では、花魁はつい今しがた廓に戻ったという。 帰ろうとする と、渡し舟はあるが船頭がいない。 そこへ小僧の貞吉が傘と足駄を持って迎 えに来て、対岸の二階で女が手招きしているのを、目敏く見つける。 親父は 深川の船頭だったから、渡し舟ぐらい漕げる、石垣の間に蝙蝠傘を挟んだりす ることはないという。 貞吉に駄賃を一円、漕ぎ返すのにもう一円やって、女 の家へ寄る。 一献召し上がって、じゃあ一杯だけ。 差しつ差されつやって いるうちに、頭が痛くなって、次の間にとってあった布団に横になる。 長襦袢になった女が、布団の隅の方にだけと入ってきた。

  「あなた、あなた」と女房のお花に起される。 離れの炬燵の中で、夢を見 ていたのだった。 話を聞いて女房は泣き、若旦那は笑い、親父は怒る。 さ っき駄賃を二円やったじゃあないかと言われて、釈然とせずに若旦那の肩を叩 いていた貞吉が、居眠りをする。 焼餅焼きのお花は「若旦那が橋場に出かけ る何よりの証拠、貞吉がまた舟を漕いでおります」