志の輔のマクラ「旭山動物園見学記」2009/03/07 07:17

 志の輔は、落語研究会は普通の落語会と違う、という。 普通は前の演者の 作った熱気に乗せられて、あとから出るほど楽だ。 ここは収録の関係で、出 る演者ごとにリセットし、自分の分を立ち上げろ、という感じになるという。  客席からは流れによって、しばしば盛り上がりを感じるから、志の輔個人の思 い込みだと思うのだが…。

 「雛鍔」のマクラで旭山動物園へ行ってきた話をする。 ちょうど映画『小 三治』の翌日、マキノ(津川)雅彦監督の『旭山動物園物語 ペンギンが空をと ぶ』を観たところだった。 年間300万人の来園者があるという旭山動物園は、 ほかの動物園とどこが違うか、志の輔はまず「でかい」という。 それぞれの 動物のいる檻と檻の間が離れている。 ほかの動物園だと虎のすぐ横に狸がい たりするが、旭山ではつぎの檻に行くのに15分ぐらい(?)歩く。 その歩 く間にリセットして、新しい動物の世界に入れる、という。

 ペンギンのパレード。 ペンギンの姿勢の良い(その恰好をして見せる)の に驚く。 蝶ネクタイが見えるようだ。

 アザラシが、何十頭もダラーッと寝そべっている。 だが地下に入ると、透 明の太いパイプがあって、魚眼レンズのように大きく見えるその中を、アザラ シが猛スピードで上下して見せる。 今までダラーッと寝そべっていたのが、 やる時はやるんだよ、という顔をして…。 動物は客に気を遣うのだ。

 ホッキョクグマ。 ふつう白熊というが、ホッキョクグマが正しい。 白熊 というより、茶熊に近い。 白熊というのは、エアコンの関係で言っているだ け。 二頭がダラダラしている。 もう少し客が集まってからにしようと、し ばらく経って甘咬みを始める。 プールを地下から見ていると、ガラスも割れ んばかりに、飛び込んでくる。 「驚いたか」という顔をして、観光客の心理 を熟知しているかのようだ。

 その極致がオランウータン。 母親が赤ん坊に乳をやっている。 赤ん坊は よく見えない。 女子高生の団体が来て「カワイイ」などと騒ぎ出すと、母親 は赤ん坊をクルッと、こちらに向けて、見せる。 女子高生たちが、一斉にケ ータイで写真を撮る。 どうやれば、人が喜ぶか、見事に読まれている。  子供は、気を遣わないからカワイイ、好き放題にやるからカワイイ。 とい うところから、「三太夫!」と志の輔は「雛鍔」に入った。