志ん輔の「反魂香」本体2011/10/05 04:42

 また、あの坊主、始めやがったよ。 寺にいりゃあいいのに…。 夜の夜中 に、鉦をカンカン鳴らすので、同じ長屋の八五郎が、苦情を言いに行く。 怖 がって、はばかりに行けないので、ガキがみんな寝ションベンをもらすじゃな いか、俺も、こないだ、やっちゃった。 何で夜中に、鉦をカンカン鳴らすん だ。 亡き者の回向です、私には言い交わした女がおりました、一枚絵にもな ったほどの女でして…。 三浦屋の高尾太夫、仙台侯に大金で身請けされたも のの、言い交わした男があると操を立てて、吊し斬りにされた高尾太夫、私が その男でございます。 昔はれっきとしたお侍でして、一通りお聞かせいたし ましょう。  (チチンチンと鉦が入り、三味線になる) 拙者は因州鳥取の島田重三郎と申 す浪人者、今は土手の道哲と呼ばれています、伊達綱宗公に斬られる前に、高 尾から回向をしてと渡された「反魂香」、これを焚くと、高尾が出てくる。 見 し(せ)ておくれよ、と八五郎。 ご勘弁を、と断るのを、長屋のみんなにはう まく言っとくと、説得。 このように焚きますとね。 やーーな心持になった と思ったら、出たよ。 「そちゃ女房高尾じゃないか」 「そういうお前は重 三さん」 「香の切れ目が縁の切れ目」無駄に使うな、と高尾。 お前の顔が 見たさゆえ、と島田重三郎。 出たね、いい女だね、と八五郎。

 八五郎は、三年前に女房のお梶が亡くなった、ぜひ会ってみたいので、少し 香をわけてくれないかと頼む。 ご勘弁を、と断られ、いらねえよ、あの粉さ えありゃあいいんだろうと、生薬屋へ行く。 源さん、あれくれ、「そちゃ女房 高尾じゃないかを三百」 そんなのはありません、名前がずらり並んでおりま すから。 伊勢浅熊(あさま)万金丹、越中富山の反魂丹。 これだ、これ三百 くれ、三百でこんなに来るのか。

 七輪で焚こう、お梶とは三年ぶりだ、有難いな。 死ぬ時に、気にかかって 死にきれないと言った。 私が死んだら、若い女を引っ張り込むんだろう。 若 い女を引っ張り込んだら、くすぐるよって言いやがった、ヘラヘラヘラ。 火 が熾きた、熾きた。 薬をくべよう、おーーら、おら。 くせえなあ、煙さえ 出ればいいんだ。 お梶出ねえな、十万億土は遠いからな、お梶は恥ずかしが り屋だしな。 どんどん、くべよう。 お梶! お梶!

 お前さん、大変だ、隣からけぶ(煙)が出て、火事だ、火事だって、言ってい るよ。 水をかけよう。 何で、他人の家に、水を撒くんだ。 この煙は、何 なんだ。 梶が出ねえかと、煙を出していたんだよ。

 普通、女房の名前はお梅で演る。 お梶から火事にした下げは、志ん輔の工 夫らしい。 何となく暗い噺が、これで、明るくなった。