「民営化だけが良しだったのか?」2014/02/05 06:36

 2012年11月25日の「等々力短信」第1041号に「「地下鉄の父」早川徳次」 を書いた。 それを大学の同級生で帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄株式 会社、愛称「東京メトロ))に勤めていたT君に送り、電話をもらって、いろい ろと聞いた話を2012年12月2日の当日記「「営団」から東京地下鉄株式会社 へ」に書いた。 彼の意見では、鉄道や航空などの旅客輸送事業は、膨大な資 本を必要とする装置産業で、かつ労働集約的なので、本来、公共事業としての 性格を持っている。 配当を目的に利益を上げる株式会社とは、相容れない面 があると言う。 安全運転(航)を第一に考えると、採算性や合理化ばかり考 える経営では心配だと、言うのであった。

 その流れで、ときどきT君から電話をもらう。 最近のJR北海道の不祥事 やトラブル頻発の件でも、それ見たことかという話を聞いた。 そもそもの民 営化が問題だったと言う。 1987(昭和62)年国鉄を、北海道、東日本、東 海、西日本、九州の旅客鉄道会社6社と日本貨物鉄道の計7社に分割・民営化 した。 北海道は、路線が長くて、乗客は少ない、採算が合わないのは初めか ら分かっている。 株式会社だから、株主に配当をしなければならない。 金 がないから、賃金を抑え、要員を削り、投資を先延ばしせざるを得ない。 鉄 道にとって何より大事な安全を確保する金がないのだ。 東京都の財政が豊か なように、国鉄も首都圏(大阪も)の運賃を高く設定していたから、JR東日本 だけが勝ち組になっている。 東京駅がリニューアルされ、丸の内界隈は賑わ っているが、三菱ばかり儲かるので、JR東海はリニアの出発を品川で計画して いる。

 T君は、民営化だけを良しとして、推し進めた政策が本当に良かったのか疑 問だと言う。 公共企業体を特殊法人として残し、全体をうまく運営する方法 はないのか。 昔、資本主義の欠陥を計画経済的要素で補完して、福祉国家を つくるというような経済学を学んだ。 ソ連の崩壊以来、計画経済は力を失っ たけれど。 資本の論理だけでやっていると、どうしても取り残される部分が 出る。 非正規雇用労働者の賃金の問題なども、そうだろう。 冷凍食品に農 薬を入れる人間なども出てくる、と。