木村吉隆さんの『江戸暦 江戸暮らし』2014/02/23 07:59

 ちょうど2年前の、2012(平成24)年2月25日の「等々力短信」第1032 号に「福を呼ぶ豆おもちゃ」と題して、浅草仲見世・江戸趣味小玩具「助六」 の木村吉隆さんの本『江戸の縁起物』を紹介した。 その木村さんが昨年暮に また、『江戸暦 江戸暮らし』(亜紀書房)という楽しい本を出された。 腰巻文 に「江戸の人びとが大切にした年中行事。平凡な毎日に晴れの日をつくって楽 しみました」「助六の江戸風俗人形と屋台物で再現した江戸の町のジオラマ」と ある。 「屋台物」というのは、本文に説明があり、「助六」さんの呼び名で、 同じ大きさの砂撒きの台に、小屋掛けの天婦羅屋、二階屋の大店などの店舗か ら、芝居小屋、寄席、猫の湯屋まで、いろいろなものを情緒的にまとめて作っ たもので、西洋の1/12、1/24、1/36サイズに縮尺したドールハウスとは少し違 う。

 第一章「江戸暦」、第二章「江戸暮らし」、第三章「江戸の町」、第四章「助六 職人噺」という構成だ。 約半分を占める第一章「江戸暦」が、立春、睦月(む つき・一月)から始まる旧暦仕立てで、俳句をやる私などにはたいへん便利だ。  「江戸の年中行事」のやり方や意味に、知らなかったことが多くて、とても勉 強になる。

 たとえば正月、親から「門松は七日の風に当てない」「玄関の飾りは十四日ま で」と聞いていた。 「江戸暦」一月六日【門松取り納め】「注連縄(しめなわ) の外側の飾りを夕方に取り払い、内側の輪飾りだけを残す。」 十四日【注連縄 取り払い】「注連縄の輪飾りをはずし、その後に削り掛けをかける。」とある。  「削り掛け」が分らないので、『広辞苑』を見た、「正月15日の小正月に神仏 などに供える飾り棒。楊(やなぎ)・ニワトコなどの枝を薄く削(そ)いで渦状 に残しておく。幣(ぬさ)の古い形といわれる。アイヌにも同様のものがある。 削り花。穂垂(ほたれ)。掻垂(かいだれ)。<(季)新年>」。

 写真ページが楽しく一目瞭然、「睦月」は江戸風俗人形で「正月を寿ぐ門付け 芸人」。 獅子舞や三河万歳は、私の子供の頃には来たが、猿まわし、太神楽(だ いかぐら)は来なかったし、わいわい天王、鳥追(とりおい)は知らなかった。  「わいわい天王さわぐがお好き」、着古した黒の定紋付き羽織に袴、粗末な両刀 を差し、顔には天狗の面。 妙な格好で子どもたちを集めては、牛頭(ごず) 天王の張り札をまき、銭を貰いに家々へ、やって来たそうだ。 「鳥追」は、 「海上はるかに見渡せば七福神の宝船」、編笠をかぶり美しく装った女太夫。  門口に立ち、三味線を弾きながら歌って銭を乞う。 元日から十五日ごろまで、 来たという。