永青文庫の「心のふるさと良寛」展 ― 2018/05/17 07:57
講談社野間記念館の次に、「永青文庫」へ行った。 「生誕260年記念 心の ふるさと良寛」展の開催中である。(5月27日までは前期「壮年期を中心に」、 7月11日までは後期「晩年を中心に」) 実に沢山の良寛の書が展示されてい るのに驚く。 日本有数の良寛コレクター秘蔵の作品を中心に、ということで ある。 漢詩、和歌、書簡、偈語、経典などが、掛軸や短冊、扇面、屏風にな っている。 仮名や草書がよく読めないこともあって、私の好みは、飄々とし た素朴な感じの漢字である。 「天満大自在天神」の神号や、「是比誰」という 自画賛 自画像がいい。 自画像は、師の国仙和尚にもらった長い杖を突き下を 向いている、賛に「是比誰(是れは比れ誰ぞ)大日本国国仙真子(しんし)沙 門良寛」とある
もともと良寛の書が好きだ。 もちろん複製だが、「愛語」という額を、私は 長い間机の前にかけ、今は寝室の枕元にかけてある。 鶴岡のお寺の和尚さん が持っていたのを、父が頼みこんで譲り受け表装したもので、後に私がもらっ た。 良寛独特の枯れた書体、巧いという字ではなく、飾らない素朴な字で、 それがなんともいい。 天衣無縫というか、真ん中辺は字が小さくなっていた り、間違えて余分な字を書いたのを、括弧でくくったりしてある。
「愛語ト云ハ衆生ヲ見ルニマヅ慈愛ノ心ヲオコシ顧(コ)愛ノ言語ヲホドコ スナリ」で始まり、「愛語ヨク廻天ノ力(チカ)ラアルコトヲ學スベキナリタヾ 能(ハサ)ヲ賞スルノミニアラズ 沙門良寛謹書」まで、題も入れて二十三行 の書だ。
出典は、道元禅師の『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の菩提薩埵(土扁に 垂)」(ぼだいさった)四摂法(ししょうほう)の「愛語」という項にあるそう だ。(角川書店『正法眼蔵』巻四) また「愛語」の一部は、「修証義(しゅし ょうぎ)」という五章からなるお経の第四章にもある。 菩提は真理、薩埵は求 める人、つまり菩提薩埵は真理を求める人。 ひたすら「生きる実践」(行為) を通して、真理に迫ろうとするもの。 菩提薩埵には、四つの願い(実践の 道)があるといわれ、それを「薩埵の行願(ぎょうがん)」といい、「四枚(し まい)の般若」ともいっている。
実践の道における「四つの願い」とは
一、布施(与えること)
二、愛語(やさしいことばをかけること)
三、利行(ひとのために自分を忘れて尽くすこと)
四、同事(助け合って生きること)
會津八一は、良寛の芸術をいちはやく認めて正岡子規に知らせたという。 言 葉の力を述べた「愛語」の額を見ながら、會津八一の総ひらがなの歌のことな ど考えていると、じつに感慨深いものがある。
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