三遊亭歌武蔵の「柳田格之進」前半2020/02/07 06:59

 黒紋付に、縦縞の袴の歌武蔵、トリらしく、新年のお慶びを申し上げます、 TBS落語研究会を本年もよろしくお願いします、と始めた。 武士は、主君の 為には命を落とす。 江州彦根藩士柳田格之進、清廉潔白、真面目過ぎるのを、 さすがに煙たがれ、上役の讒言でお役御免となり、江戸浅草阿部川町の裏長屋 住まいをしている。 娘のお絹に勧められ、気晴らしに材木町の碁会所へ出か けた。 浅草馬道一丁目の大きな質屋、萬屋源兵衛と相手になる。 毎日、打 っていると、お互いに気が合う。 手前どもに、お越しになりませんか。 じ ゃあ、お邪魔いたそう。 立派なお宅、十畳の離れで、何番か打って帰る。 い ずれ世に出た上は、お返しもできよう。

 八月十五夜、月見の晩に、お嬢様もと誘われたが、着た切り雀で、着て行く 着物がなく行かれない、柳田一人で行く。 月見の宴、一つこんなことをと、 奥の離れで碁を打つことになる。 一番勝って、一番負けた。 宴に戻る。

番頭さん。 柳田様もご機嫌のご様子でしたね。 先ほど、お渡しした小梅 の水戸様からの五十両、いかがいたしますか。 お店の帳簿に付けるか、旦那 のお小遣いにするか。 膝の上にあったが、おかしいね、ないね。 離れを、 もう一回、見て来ておくれ。 ございません、もう探す所がないんでございま す。 ない、煙草盆にもないか。 ことによると、柳田様がお持ちになったん では……。 よしな、そんなお方ではない、あんな立派な方はいない。 しく じって、ご浪人をなさっているのでございましょう。 考え過ぎだ、私の小遣 いの方にしておいてくれ。 やっぱり阿部川町の方に…。 いいよ。

番頭は悔しくてしかたがない。 自分で調べようと、翌朝早く、ごめん下さ いませ。 萬屋さんのご支配か。 ちょいと、お尋ねしたいことが。 その五 十両がなくなった、二人なので、何か判るのではないか、柳田が盗んだという のか。 黙れ、酔っていたとはいえ、煙草入と金包みを間違えることはない。  ご存知ない、左様でございますか。 それまででございます、お上に届けます、 お調べを受けることになるかもしれませんが。 奉行に届けるのか、致し方な いな、その五十両、拙者が出そう。 盗んではおらんぞ、その場にいたのは、 私の不運、明日の昼過ぎまでに整えておこう。

柳田は一通の手紙を書き、絹、番町の叔母様の所に届けろ、泊めてもらって、 明日帰って来るがよい。 父上、どうぞお腹を召すことだけは、お留まり下さ いますよう。 聞いておったか、お前に隠し事はできんな。 お腹をお召しに なるのは、無駄でございます。 私に考えがございます、親子の縁を切ってい ただきとうございます。 吉原とやらに身を沈ませて、五十両を作ります。 盗 らぬものなら、かならず他から出ます、萬屋源兵衛と番頭徳兵衛、両名をお斬 りになって、武士道をお立て下さいますよう。

長屋の女衒が、吉原の半蔵松葉に世話して、絹の器量に百両で話がまとまり、 五十両が届く。