古今亭菊六の「天狗裁き」2012/08/29 01:15

15分の仲入があって、古今亭菊六、黒紋付に着替えてきた。 羽織の紐は蜜 柑色、うたた寝している熊五郎が夢を見ているらしい。 ぶつぶつ言ったり、 笑ったりしている。 「お前さん、起きなさいよ」と起こし、「どんな夢?」で 羽織を脱ぐと白い帯だった。 夏らしく長襦袢も白で、あとでおかみさんが涙 を拭いた際に、目立った。

菊六は、初めて「宮本三郎記念美術館」を見たという。 展覧会『宮本三郎 クロニクル 1922⇒1974 -最初期作品から絶筆まで』の会場の真ん中に垂れ幕 があり、宮本三郎夫人の文枝さんが生前に聞いたという言葉が書かれていた。  「絵画は人間をかくことから次第に遠ざかってきている。 文学はいまでも人 間を書きつづけているんだ。 人間との対決は絵画でも永遠なことだ。」  これを見た菊六は、落語も同じで、人間をイキイキと描くのだという。 落 語も教養がないといけない、アカデミックなお話で、と韜晦する。

人間、依怙地になることがある。 かたくなに、意地を張る。 「天狗裁き」 は、熊五郎が見た夢の話を、女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、大家 が聞きたがり、奉行が聞きたがる。 奉行は、一旦は無罪にしたあと、人払い をして聞き出そうとし、ついには重き拷問でと、縄を打って、庭の松の木にぶ ら下げる。 一陣の強い風に巻き上げられて、着いた所は高尾の山中。 大天 狗は、心配するな、天狗は人間ではない、話を聞いてやってもよいぞ。 聞い てやってもよいのだよ。 空気を読めよ。 優しく言っている内に、話すのが よかろうぞ。 天狗を怒らせると、どうなるか、知っておろうな。