ホテルオークラ「日本絵画の巨匠たち」展2012/08/08 00:55

 3日初日のホテルオークラ「秘蔵の名品アートコレクション展」に出かけた。  今年は「日本絵画の巨匠たち 東京美術学校から東京藝術大学へ」という題が ついている。 例によって「花より団子」、この時期「桃花林」の冷し中華が楽 しみなのである。 とくに今年は着いた時間が11時半、展覧会より先に「桃 花林」へ行った。 それが正解で、夏休み真っ盛りの展覧会初日、予約がない と喫煙席、しかも一時間なら、と言う。 でも春巻を足した、冷し中華は大満 足、展覧会を忘れそうになる。

 ことし東京藝術大学は明治20(1887)年の創立から125周年、平山郁夫を 始めとする東京美術学校最後の卒業生を送りだした昭和27(1952)年から60 年目に当たるという。 ホテルオークラも開業50周年だそうだ。 東京美術 学校の歴代教員と卒業生の中から45名を選び、84点の秀作を集めた展覧会で ある。

 「日本絵画の巨匠たち」の「日本絵画」は、一見そう思う「日本画」ではな い、「西洋画」も含まれる。 東京美術学校の西洋画科は、明治29(1896)年 に黒田清輝と久米桂一郎が中心となって新設された。 黒田清輝が導入した制 度に、卒業制作とともに「自画像」を義務付けたことがあり、現在まで継続さ れている。 明治31(1898)年最初の西洋画科卒業生白瀧幾之助(名前も知 らなかった)に始まり、13人の自画像がある。 それぞれに、人柄と作風の両 方で、それらしい絵になっているのが、面白い。 文芸作品で処女作がずっと 後を引くといわれるのと同じだろうか。 皆そうなのだが中でも神経質そうな 佐伯祐三と駒井哲郎、帽子をかぶった岡鹿之助と野間仁根、おっさんのような 萬鉄五郎と中村研一、青年らしくすっきりした香月泰男と勅使河原宏(芸大出 だったのだ)。 この「自画像」だけでも、見る価値がある。

 宮内庁蔵の六曲一双×二(計四)の屏風、東山魁夷の「悠紀(ゆき)地方風 俗歌屏風」と高山辰雄の「主基(すき)地方風俗歌屏風」が、奥にでぇーーん と展示されている。 毎月三宅坂の国立小劇場に行くけれど、お濠の中には縁 がないので、見たことがなかった。 古来天皇即位の大嘗祭には、京都より東 を悠紀(ゆき)、西を主基(すき)として新穀を報ずる国にちなんだ和歌と風景 図を屏風絵に仕立てて配置するものなのだそうだ。 平成2(1990)年作のこ れは、今上天皇ご即位時に日本芸術院から二人が選ばれ、東山魁夷が悠紀地方 で秋田県、高山辰雄が主基地方で大分県を担当、それぞれ大和絵の「すやり霞」 (←この言葉も初めて知る)の間に春夏・秋冬の景色を描いている。 新知見 だらけの屏風だった。

 私が一番気に入ったのは、加藤栄三の日本画「秋」(昭和6(1931)年)であ る。 秋の色の中にある谷間の一集落を描いているのだが、それがいかにも平 和でのどかな小宇宙という感じがするのだった。