歴史学界の共通認識となっている「通説」 ― 2020/09/07 06:59
日本中世史の呉座勇一国際日本文化研究センター助教が、朝日新聞に連載したコラム「呉座勇一の歴史家雑記」を読んで、最新の研究による織田信長像<小人閑居日記 2020.4.3.>を書いていた。 その中に、「著書『陰謀の日本中世史』(角川新書)では、本能寺の変に関して「明智光秀を操った黒幕がいた」といった類いの、学会では完全に否定されている奇説珍説を徹底批判したそうだ(2018年10月23日「奇説が世に浸透する理由」)。 奇説珍説が世間に浸透する最大の原因は、テレビの歴史バラエティー番組がそれらを面白がって紹介することにあるという。 歴史学界の共通認識となっている「通説」と、小説家や在野の歴史研究家の単なる思いつきを、あたかも対等な学説のように扱うのはマスコミの悪しき平等主義で、実際には「見解の相違」など存在しないのだそうだ。」と書いた。
立花京子さんの「信長暗殺イエズス会黒幕説」や、明智憲三郎さんの「本能寺の変」の真相説は、奇説珍説なのだろうか。 閑居小人には、謎は深まるばかりである。 歴史学界の共通認識となっている「通説」というのを、一般的にやさしく書いてもらいたい。
と、ここまで書いて、「呉座勇一の歴史家雑記」2018年9月25日「「鎖国」の概念 昔と今」を見直したら、こうあった。 歴史教科書は基本的に保守的で、学界で画期的な学説が提唱されたとしても、それをすぐに取り入れることはない。 大半の研究者が妥当性を認め、その説に基づく研究が次々と発表されて、初めて採用する。 その頃には説の発表から30年以上経っていて、もはや「新説」ではなく「通説」になっている。 それどころか学界では「通説」批判の新説が出現している。
日本史学界では江戸幕府の対外政策を「鎖国」と捉えることを批判する研究は既に1980年代には登場している。 今では「四つの口(長崎・対馬・琉球・蝦夷地)」論という「通説」を踏まえた上で「鎖国」概念を再評価する見解すらある。 歴史学研究は常に更新されていくものなのだという。
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