むのたけじさんと小さん2009/03/03 07:15

 個人通信を続けていると、時々「むのたけじ」と週刊新聞『たいまつ』とい う言葉に出合う。 気になってはいたが、むのたけじさんを読んだことはなか った。 2月21日のBS2「週刊ブックレビユー」で、ミョージシャンで翻訳家 の中川五郎さんが薦めていたので、読んでみることにした。 むのたけじ『戦 争絶滅へ、人間復活へ―九三歳・ジャナリストの発言』聞き手 黒岩比佐子(岩 波新書)である。  むのたけじ(武野武治)さんは、1915(大正4)年1月2日秋田県の生れ、 東京外語学校スペイン語科卒。 報知新聞社を経て朝日新聞社に入り、1945 年8月15日、それまでの報道に関わった戦争責任をとる形で、たった一人退 社した。 1948年、秋田県横手市で週刊新聞『たいまつ』を創刊、以来休刊ま での30年間主幹として健筆を揮った。

 その むのたけじさんが、じつは落語が大好きだという。 五代目小さんと誕 生日が同じで、その落語にすごく心惹かれた。 というのは、小さんは二・二 六事件のとき、兵隊に取られて反乱軍の中にいた。 そのため危険な満州の戦 場に送られ、三年後に除隊したものの、1943年12月に再徴兵され、このとき も死を覚悟したが、運よく生き残り、敗戦の翌年にようやく帰国した。

 むのたけじさんは、小さんの落語を聴くと、あざむかれたものの悲哀を感じ るという。 何かむくれている。 でも、むくれたってだめだ、と自分で自分 に言っている。 笑い話をやりながらも、彼は普通の落語家とは全然違う。 あ ざむかれた世代ゆえのうらみつらみというものがあって、それを自分でなめな がら我慢しているような、やる気がないようで、なにか寂寞としたものをもっ ている。 と、むのさんは、語っている。

 私は、円生や文楽がいた時代から、ずっと小さんが一番好きだった。 特に、 そのとぼけた味が…。 むのたけじさんが感じていたようなことが、その奥にあったとは、思ってもみなかったけれど。

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