有元利夫、独自の画風について2010/08/09 06:33

 5回藝大受験を経験してデザイン科に入った有元利夫は26歳で、電通に就職 が決まったのを機に、藝大で知り合い、先に日本画科を卒業していた容子さん と結婚した。 容子さんは、一時は筆を折り、妻として、助手として、有元利 夫の制作を支えた。 今は、日本画家で、実践女子大学教授だそうだ。 その 容子さんは、この展覧会の開会式で、有元利夫のどこか古びた作風について、 「有元や私が学生のころは学生運動真っ盛りで、古い体制を壊し新しいものを 求めた時期でしたが、そんなときに悩んで見いだしました」と、語ったという (7月15日朝日新聞夕刊)。

 有元利夫は、自らの画風について、こんなことを言っている。  「様式」はなつかしい。 それは、現代が失ってしまったもののひとつだか らだ。 現代に入る前、人間は洋の東西を問わず、常に「様式」を持っていた。  その時代その時代の、ものを作る人々を、まるごと支えていたような大きな「様 式」を。  「風化」が好きだ。 フレスコ画を見ると、いかにも時間そのものが喰い込 んでいる感じがして。気持が安らぐ。 時間に耐えて、「風化」して、それでも 「そこに在る」というものは、ピカピカの出来立てと較べ物にならないほどの 存在感、リアリティを持っているように思える。  個性一辺倒の現代に、何かやすらぎを与える「大きな小宇宙」。 自分の気に 入ったモチーフを、ランダムに、趣味的に選び、自由で気ままな「空間」を作 り、その「空間」にドラマが生まれ、物語が聞えてくればいい。

 有元利夫の絵の前に立って、しばらくその世界の中に入り込む。 有元は説 明的になることを嫌っているから、見るものは自分の記憶を総動員して解釈し、 物語を紡ぎ出さなければならない。 それは、きわめて俳句に似ているのだっ た。

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