「没後25年 有元利夫展 天空の音楽」2010/08/07 06:39

 38歳の若さで逝った有元利夫の絵には、どこか惹かれるものがあって、毎年 三番町の小川美術館で開かれる展覧会を見に行くようにしている。 先日は、 東京都庭園美術館の「没後25年 有元利夫展 天空の音楽」を見て来た。 有 元利夫の絵の雰囲気が、旧朝香宮邸のアール・デコの建築や装飾に溶け込んで、 とてもよい展覧会になっている。 その全貌が見渡せるから、この展覧会によ って、また新たな有元利夫ファンが生まれるのではないか、と思った。 おす すめだ(9月5日まで、8/11、8/25休み)。

 今回初めて見た卒業制作「私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ」 (1973)の連作には、二つのことを感じた。 今まで見たことのなかった原色 に近い赤や、群像が描かれていること。 そして、その後の作品に特徴的なフ レスコ画風の技法が、すでに使われていること。 有元利夫は、25歳で藝大在 学中の昭和46年、イタリアで15世紀の巨匠ピエロ・デラ・フランチェスカの フレスコ宗教画と運命的な出会いをする。 深い感銘を受けるとともに、日本 の古い仏画や寺院の壁画を思い出し、宗教画の根本には洋の東西に共通するも のがあると確信、特異な表現を切り拓いていく。 その出発から、有元利夫独 自の世界を掴んでいたのだった。

 有元利夫は、(1)なぜほとんどの場合一人の人間しか描かないのか? (2) 女のようであるが、中性的で、なぜこれほど体格がよく、腕が太いのか? (3) 手の先は細かく描かれず、脚はスカートやテーブルに隠れているのは、なぜか?  (4)紅白の玉や花、トランプ、花びら、花火、果ては人間までもが、浮遊し ているのは、なぜか?