「熱燗」と「霜柱」の句会2010/12/16 07:05

 9日は「夏潮」渋谷句会だった。 兼題は「熱燗」と「霜柱」。 酒を飲まな いから「熱燗」はどうなるかと思ったが、つくってみると「霜柱」の方が難し かった。 こんな七句を出した。

熱燗や神棚の下奥の席

熱燗やたはむれに借る耳の朶

熱燗や今年の幸を数へ挙げ

熱燗や校了の二字書き終へて

霜柱出て踏んだらと妻に言ふ

見違へるいつもの小庭霜柱

列び立つ玻璃の細管霜柱

 一句目、「エー出来ますものは汁(つゆ)、柱、鱈、鮟鱇のようなもの」とい う金馬の落語「居酒屋」では、「宮下」と言っていたか。 「校了」の句、ちょ うど「夏潮」一月号の初校を見終わったところだった。 最後の句、昔、ガラ ス製造の家業で、クリスマス電球の材料になるガラス細管を引いて(名人の職 人がいたが、後に機械引きに取って代られる)、商っていたことを、句が出来た 後で思い出した。 中空の管(いわばマカロニ状)と、ムク(無垢・無空)と 呼ぶもの(つまりソーメン状)があった。

 結果は、「泣かず飛ばず」が続いていた渋谷句会としては、珍しく票が入って、 よい一年締めの句会となった。 〈熱燗や今年の幸を数へ挙げ〉を英主宰と淳 子さん、〈熱燗や校了の二字書き終へて〉を主宰と華さん・さえさん、〈見違へ るいつもの小庭霜柱〉をやすしさん、〈列び立つ玻璃の細管霜柱〉を主宰と良さ ん・華さん・淳子さんが採ってくれて、計10票。 つまり主宰選が三句とい う嬉しい結果だった。 主宰の選評。 「今年の幸」…冬、年末のいろいろな 季題を連想させる上手い句、熱燗のいい部分を押えている。 「校了の二字」 …神経を張りつめた校正が終わって、その机の上だろうか、ご苦労さんという 熱燗。 「玻璃の細管」…カニ蒲鉾のような霜柱をとらえた「細管」という硬 い言葉づかいがユニーク、この作者はこなれていない言葉を使う。