八っつあんはジャズ通だった2014/02/03 06:32

1月25日の「等々力短信」第1055号「静(せい)」の歌会始に、苗字と名 前の間に「の」が入る話を書いた。 すると佐藤允彦さんの『一拍遅れの一番 乗り』に「ヤァヤァ我こそは」という文章があった。 御隠居と大工の八っつ あんが問答をする。 満腹寺でビワくれるってえから行ったら、坊さんがベベ ンベンベンと琵琶弾いてなんだか辛気くせえフシうなった。 なんでも熊谷さ んてえのとナオザネさんと次郎さんが出てくる話で。 それは一人の名前だ、 「熊谷の次郎直実」と、昔の武将は自分の領地や住んでいる土地を名の前につ けて「名乗り」をした、武士ばかりではない、侠客も「清水の次郎長」「森の石 松」なんて、『の』を入れたもんだ。

「誰でもそうだったんですかい」「まあたいがいはな」「ミュージシャンで も?」「もとはそうじゃ」「じゃ聞きますがね、マイルス・デビスはどこに住ん でたんで?」「舞鶴じゃな。舞鶴のデビス」「オスカー・ピーターソンは?」「大 塚のピーターソン」「チャーリー・パーカーはどこです?」「これは場所ではな い。彼はもと槍の名人だ」「へ? 槍ってあの長い?」「うむ。血槍のパーカー」 「へぇぇこりゃ驚いた。じゃ、ディオン・ワーウイックは?」「京都の舞妓だっ たな」「えーっ、なんで?」「祇園のワーウイック」

「なんだか怪しいな。御隠居はひとをからかうときはすぐわかるんだよ。鼻 の穴がふくらむから。デューク・エリントンは伯爵だったてぇのは本当ですか い?」「いや、そんなものではない。あれはお前と同業だな」「大工?」「うむ、 大工(でぇく)のエリントン」

「御隠居、今日は冴えてるね。ボーカルはどうです。サラ・ボーン」「品川出 身、伊皿子のボーン」「ちょっと苦しかったね。カーメン・マクレェ」「この人 唄はうまかったがついに運転免許とれずじまいだったな。仮免のマクレェ」「こ りゃ参ったね。じゃ、エラ・フィッツジェラルド」「顎の形に特徴があったな。 鰓のフィッツジェラルド。ところで八っつあん、吉祥寺からすぐれた人材が輩 出しておるが御存知か?」「へぇ、初耳ですね。誰です?」「ざっと見渡して、 吉祥寺のガーシュイン、吉祥寺のベンソン、はっはっは……」

これを読むと、佐藤允彦さんが、私と同じ好みを持っていることが分かる。  実はこれ、私が知っている名前だけを拾ったので、実際には八っつあん、アレ ンジャーなんぞまで含めて、この五倍はジャズメンの名前を知っているジャズ 通なのであった。

そういえば平成元年、私は戯れに友人の病院長に手紙術の免許皆伝状を授けた時、大日本五之日五百倍馬場流手紙術 家元 馬場小路好麻呂(ばばのこう じすきまろ)を名乗っていた。

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