桃月庵白酒の「明烏」前半2019/04/03 07:13

 白酒は、白い着物に、黒の羽織。 異性の目が気になる、最近は女性の前座 さんが増えて来て、着替えるのに、二、三日目の下着は、きれいなのにしてく る。 大学の時、着るものに気をつかってみようかと、裏ハラの小洒落たショ ップ、民家風のお店へ入ると、民家だったりする。 同期の甚語楼さんと、コ ロッとしたのが二人、嫌がらせかと思われる。 フレンドリーというより失礼 で、何探してんの、これ来てるよ、と、ダメージTシャツ、住んでいた家賃と 同じ位の値段だった。 翌日、着て行ったら、後輩が、事故りました?

 流行の発信地、吉原、廓、裏浅草。 男は一度足を踏み入れて、お土産をも らった。 瘡(かさ)を掻く、英語でスピロヘータ。 倅はまた本を読んでい るのかい、困ったものだ。 頭が痛くなったって、散歩に出ましたけれど、な かなか戻りませんね。 ほっときな。 もう帰って来た、時次郎か。 只今、 戻りました。 笠森様の御祭礼でして、酒の代わりにお強(こわ)とお煮しめ を頂きました。 お子さんたちと、食べ比べをして、みなさん五杯なのに七杯 まで頑張りまして。 蝶々を追いかけて行って、道がわからなくなり、山田さ んの坊っちゃんに送って頂いて、帰って参りました。 婆さん、山田さんの坊 っちゃんは、いくつだい? 今年、八つかと。 時次郎は十九だよ、ちょっと 困るんだ、堅い、堅過ぎる。 世の中、表もあれば、裏もある、お父っつあん に万一の時があったら、お前がこの店をやっていかなければならない、外のこ とを知らないんでは、商売の切っ先が鈍る。 たまには外に出なけりゃあいけ ない。 町内の源兵衛さんと太助さんが、浅草に流行るお稲荷さんがあるから 行かないかと言ってましたが、行ってもよろしゅうございますか。 観音様の 裏手だな、あそこは日本一のお稲荷さんだ、お父っつあんも若い時には日参し たものだ。 心も、身体も、動かされる所だよ。 お籠りをすると言ってまし たが、貞吉に掻い巻きでも持たせますか。 そんなものは、みんな揃っている。  ナリが悪いと、ご利益が薄いから、着替えて行きなさい、派手なのがちょうど よい。 婆さん、お賽銭もたっぷり持たせて。 源兵衛さんと太助さんなら、 お参り馴れしているから、万事任せて。 途中で中継ぎといって、お清めのお 酒のようなことをする、お前もお猪口に一杯ぐらいは飲めるだろう、あとは飲 んだふりをして杯洗に空ければいい。 お勘定はお前がはばかりに行くついで に一手に払うんだ。 割り前ということに。 そんなことをしたら、あの二人 は町内の札付きの悪るだ、何を言われるかわからない。

 信心ということにして、連れてってくれと頼まれたんだが、親も大変だな。  ずっと子供でいたい。 子供が生まれてきても、お父っつあん、お父っつあん って、呼ぼう。 その内に、自覚ができる。 坊っちゃん! 坊っちゃん! 走 ってんのか、あれで。 こっちから、行こう。 ナリが悪いと、ご利益が薄い ってんで、着替えて来ました。 お二人は、ご利益はよろしいんでしょうか。  それなりに。 途中で中継ぎということをするそうで、私もお猪口に一杯ぐら いは飲めますが、あとは飲んだふりをして杯洗に空けるようにします。 下戸 は下戸で、食い物がある。 お勘定は、私がはばかりに行くついでに一手に払 いますから。 割り前にすると、お二人は町内の札付きの悪るだから、何を言 われるかわからないそうで。 お父っつあんに言われた通り、言ってるな。 町 内の札付きの悪るだって、面と向かって言われたのは、初めてだ。 堂々と言 われると、誉め言葉のように聞こえる。

 (雑踏で若旦那、人にぶつかりそうになりながら)申し訳ありません。 恐 れ入ります。 皆様、お籠りの方々ですか? 中には、お参りだけの人もいる。  柳の木があるだろう、あれが有名な………、御神木だ。 はぐれたら、あの下 で待っているように。 門があるだろう、あれは………、大鳥居だ。 大鳥居、 朱色じゃないんですね。 掃除をしないから、黒くなった。 三味線、太鼓が 聞こえますが? お稲荷さんを、お慰めしているんだ。 どこ行くの。 はば かりへ。 行ってらっしゃい。  驚いたね、まだ気が付かないんだ。 俺は先に行くから、お前、お巫女さん の家とか言って、連れて来い。

 おい、女将いるかい。 伺っております。 その田所町の堅物、引っ張り出 してきた。 あら、あら。 年が十九、お稲荷さんのお籠りということにして、 ここはお巫女の家、女将さんはお巫女頭。 嫌ですよ。

 田所町三丁目日向屋半兵衛の倅、時次郎と申します、今晩は三名でお籠りに 上がりました。 お巫女頭でございます。 お前たち、なに笑ってんの。  坊 っちゃん、きれいな方で、お稲荷さんも大喜びでございましょう。 みんな笑 わないで、私まで可笑しくなるじゃないの、早く、送っちゃいましょう。

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