林家正蔵の「おすわどん」2023/12/10 08:19

 正蔵は、黒の羽織に、ブルーグレイ(熨斗目花色?)の着物。 寄席のお客様、男性一人という方が多い、友達がいないんでしょう。 ご夫婦でいらしてるのは、仲が良いか、終わっているのか。 浅草演芸場、レンタル着物のカップル、手をつないでいるなと思ったら、身八ツ口から手を入れてる、落語なんかやっていられない。

 下谷阿倍川町の呉服屋、上州屋の徳三郎と女房のお染は仲が良いことで評判だった。 だがお染が鼻風邪から患って、江戸中の名医に診せても、小首を傾げる。 ある日、亭主の徳三郎に「あの世からお迎えが参りました、後添えのことが心残り」と言って、亡くなった。 大店の主だ、一周忌に親戚一同が集まった。 徳さん、これまで気丈で偉かったな、でも言葉が残っている内は、仏が浮かばれない、成仏できない、奥の女中のすわを直したら、お染さんも可愛がっていたんだから、きっと喜ぶ。 皆様にお任せします。

 すわが後妻になると、なるほど表も裏もない働き者で評判がいい。 三か月ほど経ったある晩、徳三郎が小用に起きた廊下で、表の戸をバタバタと叩く音がして、「おすわどーん、おすわどーん」と。 誰だ、名前を呼んでいるのは。 明くる晩も、表の戸をバタバタと叩く音がして、「おすわどーん、おすわどーん」と。 これが毎晩続き、前のおかみさんではないかと、店の者たちも気味悪がる。 おすわも、それを気に病んで、どっと床についてしまう。

 徳三郎は、番頭、頼みがある、今晩、正体を確かめてもらいたい、と。 お暇を頂きます、と番頭。 だが上州屋の家作に浪人がいるのを思い付き、話をして頼むと、お引き受け致します。

 今晩、夕刻(正蔵、羽織を脱ぐ)、浪人は、「化け物、いつでも参れ」と待機する。 「おすわどーん、おすわどーん」。 待て待て! 命だけは、お助けを。 お前は、何だ? 蕎麦屋です。 「おそば、うどーん」「おそば、うどーん」と。 バタバタしたのは? 渋団扇で、七輪に火を熾した音で。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花。 拙者は、上州屋の主に頼まれて、化け物退治に参ったのだ。 化け物の首を持ち帰りたいので、首を出せ、遠慮いたすな。 遠慮して、首の身代わりに、手前のせがれを、と懐から出す。 何だ? 蕎麦粉(子)でございます。 かような物を出して、どうする? 手打ち(手討ち)になさいませ。

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