立川龍志の「花見の仇討」後半 ― 2026/03/29 08:02
熊さんが飛鳥山の上で待っている。 八は、行脚僧の役だから、全身鼠色の形で出掛けたところを、上野広小路で、本所の伯父さんと鉢合わせしてしまった。 伯父さんは足が速い。 八公、どこへ行くんだ。 花見の趣向だと言ったが、耳が遠い。 何、相模から四国へ行く? 俺んちへ来い。 馬鹿に力が強く、引っ張って行かれる。 伯母さんが留守で、話ができない。 酒を飲ませて、逃げようと、笈櫃から酒を出し、二人で飲み始める。 伯父さんは酒が強く、八はいけない口なので、ベロベロになる。 面倒くさいと、ゴロッと寝る。
巡礼兄弟が、やってくる。 もういっぺん、稽古しよう。 仕込み杖を振り回したのが、人の顔に当たった。 無礼者! ご勘弁を。 泥杖で武士の面前を叩くとは。 間違いで。 勘弁ならん、首を出せ、遠慮するな。 近藤、近藤、この巡礼、仕込み杖を持っておる、大望ある身ではないか。 これから敵討か、世は太平というのに立派じゃ、敵はどこじゃ? 飛鳥山で待っている。 もしも探し出したら、助太刀いたすぞ。
熊は、ずっと煙草を吸いながら、待っているので、顔が紫色になっている。 何をやっているんだ。 巡礼兄弟、どうしたんだ、駆け出して来るぞ。 二た手に分かれた。 聞いて、回っている。 おい! こっちだ、こっちだ! 敵が呼んでるぞ。
汝は、石野地蔵よな、立ち上がって、いざ尋常に勝負、勝負! 喧嘩だ、敵討だ! 大山の人だかり。 中は何です? 巾着切りが、捕まったんで。 素っ裸になって、何も盗ってないとか。 乞食のお産だよ、ニュッと出たが、これが逆子、頭のいい人がいて金を撒いたら、さすが乞食の子、足を引っ込めて、手を出した。 落とし噺だね。 木の上の人、中は何です? 敵討だよ、巡礼兄弟が、負けそうになってる。 声をかけろ。 早く、死ね、浪人!
六部の八は、どうしたんだ? ちょいと、突け。 向きになってやるんじゃない、本身なんだぞ。 一人っつ、やれ。 なんだ、相談しながらやってるぞ。 中は何だ? 町人。 仇討か、近藤、助太刀をしてくれよう。 よーっ、最前の孝子両名か。 敵に会えて、目出度い。 私のお父っつあんを、殺したんで。 胴に隙があるぞ! 何! 助太刀、本物の侍じゃないか、斬られるかもしれない。 目をつぶって、斬り込め! 侍が大ダンビラを引き抜いた。 あれれ、両方が、逃げ出したぞ。 これこれ、逃げるには及ばん、最前から見るところ、勝負は五分と五分だ。 いいや、肝心の六部が参りません。
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