桂藤兵衛の「源太の産」 ― 2008/07/27 07:56
桂藤兵衛といっても、東京の噺家だ。 林家彦六の弟子で上蔵といい、正雀 の兄弟子、彦六の死により橘家文蔵門下に移ったが、真打は正雀に一年遅れて、 桂藤兵衛になったのだそうだ。 噺家らしく髪を短く刈り上げていて、頭を下 げるとテッペンが平らに透けて見える。
「源太の産(げんたのさん)」は、聴いたことのない噺で、それもそのはず本 人も「珍品中の珍品」という。 源太が寝込んで、「死ぬ時は、お前が先」って 仲の兄貴分が、聞き出すと、これが恋患い。 紫さんという産婆さんの娘で、 22になるみどり、産婆学校を出たばかり、ただし強い近眼だという。 源太が 出入りの伊勢屋で仕事をしていて、奥さんのおめでたで早仕舞いになった時、 やってきて、乙な女なのにひと目惚れした。 寝ても覚めても、その娘のこと ばかり、朝の光のその中で、おまんまっ粒も、娘の顔に見える、という。 男 嫌いだというが、差しになれば話ができるだろうと、兄貴分が一計を案じる。 俺がお前に、お前が俺のカカアになれ、と一芝居打つ。 源太は、去年の茶番 で使ったお軽のカツラをかぶり、鉢巻をして、腹に手拭をまき、うなっている。 兄貴分が産婆を迎えに行き、名指しして、一軒ほかに行っていた娘がやってく る。 亭主役の兄貴分は、晒しや脱脂綿、盥、お湯、畳をひっくり返すなど、 いろいろと準備させられる。 ド近眼のみどりが、産婦の下半身にかかる。 こ らえきれなくなった源太のモノが大きくなって、みどりのホッペタにポチッ。 「たいへん元気な、お坊ちゃんでございます」
文字通り「珍品」ではあったが、それだけのものだった。
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