志の輔の「三方一両損」2008/07/26 07:10

 志の輔は、橙色の羽織にモスグリーンの袴で出てきて、日本は亜熱帯から熱 帯になったんじゃないか、街路樹も椰子かなんかになるだろう、という。 コ ンビニに入ってキュッと冷えて、また暑い街に出る、冷房と灼熱を繰り返して いると、冷蔵庫の麦茶の気持がよくわかる。 オリンピックの競技には、二つ 種類がある。 0.01秒を競う勝ち負けのはっきりしたのと、芸術点を競うもの。  落語は後者で、笑うという行為は勝手で、どこにスポットを当てたらいいか難 しい、と小噺を5コースやった。 ゴッホ、ダ・ヴィンチ、モネの絵を見た奥 様が「これはピカソね」「奥様、それは鏡でございます」という第三コースが、 一番可笑しかった。

 「三方一両損」は、ご存知の噺だ。 柳原で財布を拾った神田白壁町左官の 金太郎が、神田小柳町大工の吉五郎の所に届けたのに、書き付けと印形だけは もらうが、三両の金は懐を飛び出した不実な金だ、持って帰らないと殴るぞ、 と受け取らない。 金太郎も、こんなもんが欲しくて来たんじゃあない、殴れ るものなら殴ってみろ、というのを吉五郎が本当に殴って、派手な喧嘩になる。  双方の大家を巻き込み、御奉行所に訴え出て、大岡越前守の登場となる。

 志の輔は落ちで、「二回ひねり」を見せた。 大岡越前守は、てこずりそうな 案件を選んでやっていたから名を残し、TBSで毎週やるほどになった、という。  「三方一両損」を得意になって説明する大岡越前守、しかし一同は何だかわか らない。 一両損してまでする面白い裁きだから、後世に残るんだ、膳部の支 度を。 昨夜から心配で、腹ぺっこぺこだったという二人、思いっきり食おう、 というのを、腹も身の内ほどほどにと奉行、「多くは食わねえ、たった一膳」。  「両名に尋ねる、それの何が可笑しい」