権太楼の「家見舞」その前半 ― 2008/07/28 07:11
権太楼、2月に「百年目」を演った時よりは、元気そうでよかった。 「暑 くございますね」と変な挨拶で出て、「だからね、ここにいたほうがいいんです」、 と。 義理堅いところのある男、「義理とふんどしは欠かしたことがない」と啖 呵を切って、ケツをまくったら、ふんどしがなかった。 兄貴分が新築したと いうのに、祝いに行くのが最後になったらしい二人、直接出かけて、どういう ものが欲しいか、ワァーッと云ってくれという。 総桐の箪笥、祝い物に四角 張っているのはいけない、茶箪笥は、と一人が勝手なことをいうのを、もう一 人が「高いよ」と、袖を引っぱる。 台所の米びつ、へっついも、「高いよ」。 大きく出て、何でもいい、ちりとりでも、ゴミ箱でも…。 とうとうバケツを 使っているのを見つけ、水瓶(みずがめ)にしようとなる。
水瓶を買いに行く。 備前焼の二荷入りが28円。 焼け火箸を水に突っ込 む音のしねえようなのは、ないか。 「ニジュー」はダメ。 一荷入り6円。 お前が出せ、近いんだ、こまかいよ、ドンドン出せ、ドンドンない、ドンでお しまい、5銭。 5銭持って、世の中うろうろしていたのか。 そういうお前 は、俺は1銭もない。 親父、少しまけろ、一つレロレロにまけろ、途中をは っきり言ってください。 5本の指を少し曲げた形で出す。 何ですか、その 龍のツメみたいなのは、5円ですか。 5円なら、広げる、世の中をはばかっ た形だ。 で、はっきり5銭といって、まだ寝てんの、寝ぼけてんの、といわ れ、値段が折り合わない、と古道具屋に行く。
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