世川行介著『泣かない小沢一郎(あいつ)が憎らしい』2010/09/06 06:50

 友人がタイムリーな本を送ってくれた。 8月30日初版発行の、世川行介著 『泣かない小沢一郎(あいつ)が憎らしい』(同時代社)。 その立場は帯に明 確だ。 「こんなにも罵詈雑言や中傷誹謗ばかり浴びせられては、いかにも小 沢一郎が不憫であるし、同時代を生きる僕たちが、なさけない。」 ペンネーム だろうと思われる世川行介さんは、略歴に1952年生、山口大学経済学部卒、 大和證券勤務後、特定郵便局長を経て、1999年から放浪生活に入り、現在に至 る、とある。 ここ三年ネット上のブログ『世川行介放浪日記』で、小沢一郎 についての感想を書き綴っており、それに共感し、だらしない平成政治を憂え る多くの読者との意見交換の中から、本書が生れたという。

 著者は1993(平成5)年に小沢一郎が出版した『日本改造計画』で提出して 以来の政治改革案を、論理的(知的)で「一級品」の優れたものだと言い、江 藤淳や吉本隆明の評論を引用して補強する。 「小沢一郎は、東西冷戦構造が 崩れた後の一七年間を、日本再構築(世界の中での日本という国家のあり方) のために、懸命に生きた」「小選挙区制と二大政党を基盤にした「新しい民主主 義」の理想を、追い求め続けてきた」、しかし「優れた理念のゆえに、嫌悪され、 中傷され、憎悪され、排斥され続ける」という。

 私の読後感を率直に言う。 繰り返し「優れた理念」と述べられるだけで、 その中身、具体的な内容についての言及が、ほんの少ししかない。 したがっ て、小沢一郎さんがどれだけ優れた政治理念や政策の持ち主であるのかが、見 えて来ないのだ。 ただ、小沢一郎さんの足跡をたどることによって、私も同 時代を生きた日本の政治史のあれこれの局面を思い出し、整理することが出来 たのは、有益だった。