『自転車ぎこぎこ』口もぐもぐ2010/09/14 07:08

 伊藤礼さんの『自転車ぎこぎこ』には、輪行の途中で食べる、美味しそうな ものがいくつか登場する。 ぜひ、行って食べてみたいと思う。 自転車を漕 いで、おナカが空いているから美味しいのかもしれないけれど、それは実際に 食べてみなければ、分からないからである。

 まず、杉並・久我山の礼さんの家から16キロ、虎ノ門病院の歯科に通う途 中、四ッ谷駅の手前、若葉一丁目にある「わかば」のタイヤキ。 安藤鶴夫さ んや、入江相政さんの本で、知ってはいたが…。

 須田町交差点、フルーツパーラー万惣のホットケーキ。 池波正太郎が愛で たホットケーキは、噂に違わず、カリッと焼けて美味しかった、そうだ。

 江ノ島、水族館の前の竹波という魚料理の店の、オニカサゴの煮付け。

 蒲郡の海岸、竹島水族館の前、みやげ物屋が数軒並んでいる、その一番端で 海産物を売っている店が副業でやっているヨシズ掛けの店。 七輪で焼く三河 湾の大アサリ、それとふつうのアサリ。 三月がいちばんの季節だが、ほっぺ たが落ちるほどだ。

 渥美半島、春三月、田原の道の駅「めっくんハウス」の、粒の大きさ八セン チぐらい、九粒入ったパックが五百円のイチゴ。 最初はパックが四つ入った ボール箱が五百円かと思って、気持が高揚し、家族を連れて引っ越して来よう と、ひそかに考えた。 会計でパックひとつの値段とわかって、少しがっかり したが、高野フルーツ店なら確実に五千円の値段が付くと思い直す。 高野フ ルーツ店の店頭のことならば、誰でも納得する。 あそこの店の値段の付けか たは革命的だが、見たひとはみな当然の値段だと考える。 スイカとかビワと かマンゴーとかスイミツには、貧乏人に買えない値段が付いている。 どうだ、 この値段で買える奴がいるか、という値段だ。 貧乏人は、恐れ入りましたと 言うしか手はない。 そこでこのイチゴは、いますぐ買わなければ、高野フル ーツ店に送られてしまうにちがいない、と考えた。 それで、伊藤礼さんは買 ったのである。 すごく美味しかった、食べて良かった。 九粒のイチゴを、 四人で二粒ずつ食べたらしいが、余った一粒を誰が食べたかは、書いていない。