志ん橋の「火焔太鼓」 ― 2012/01/23 04:42
志ん橋は出るなり、落語研究会の初日の出でございます、おめでとうござい ます、と言う。 ご存知ない方がいるかもしれない。 志ん橋は、ツルツルの やかん頭だ。 そして、志ん生のやかん頭を継いだかのような、志ん生そっく りの「火焔太鼓」を演じた。 志ん生のそれは、ほんとうに可笑しい。 そっ くりやった志ん橋が、それほどでなかったのは、なぜだろう。 それが疑問だ。
マクラで、商売が幅広くなってきた、と言う。 道具屋も、上中下とある。 だんだん目が肥えてきて、ニセと本物、時代、誰の作か見定められるようにな る。 上は、目抜き通りに、明るくて、立派な店構えで、値段にゼロが多い。 中位が、近頃多い。 リサイクルショップとか、アンティークショップとかい う。 ゴミという、がらくたもんを扱うのが、下。 一番裾の方は、都内には なく、地方に行くと目にする。 がらくた置き場かと思うようだ。
何か古くて珍しいもの、古い手紙か掛け軸(かけじ)はないか? 小野小町が 清水次郎長にやった手紙があります。 小野小町と清水次郎長では、時代が違 うじゃあないか。 それがあるから、珍しい。 これは書じゃあないか? 書 ォーーです、古くて、よくわからない。 いいね、安かったら、貰って行く。 小野道風かと思ったら、「今川焼」としてあるじゃないか。 振り子のない柱時 計があります。 役にたたない。 さっき、振り子が入りました。
ぼんやり、世の中ついでに生きている道具屋甚兵衛と、はっきりしているお かみさん、八年も店にある箪笥の話、奥の火鉢を前の米屋に売っちゃったあた りから、志ん生そっくりの「火焔太鼓」になる。 清盛の溲瓶のほかに、時代 がついている物で損した例として、頼朝のフンドシ、塚原卜伝の鍋蓋を挙げた のぐらいが、光る志ん橋のわずかな工夫だったろうか。
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