小権太の「金明竹」2013/02/12 06:30

 2月4日は第536回の落語研究会だった。 豪華メンバーで、盛況だった。

「金明竹」      柳家 小権太

「夢金」       古今亭 菊之丞

「うどん屋」     柳家 権太楼

        仲入

「綿医者」      柳家 喬太郎

「居残り佐平次」   古今亭 志ん輔

 小権太というからには権太楼の弟子なのだろう。 来秋、真打昇進だそうだ。 眉毛の下にすぐ目がある、分子生物学者の福岡伸一さん似の顔。 一家そろっ て馬鹿の小話から入って、「松公! お向こうの婆やさんが、怒っていたぞ、何 をやったんだ?」と、道具屋の伯父さん。 赤ん坊が泣きやまないから、食べ させた。 何を? あたいのカカトの皮、口の中に入れたら、もぐもぐやって いたけれど、ペッとほきだした、赤ん坊はあんまりカカトの皮が好きじゃない んだ。 それで松公、甥っ子の小僧に、店の前を掃除させ、水を撒いてからと いうと、通行人にかけそうになる。 謝って、二階の座敷を掃除しろというと、 二階から水が漏って来る。 もう何もしなくていいと店番をさせ、誰か来たら 声をかけろと言っておいたのに、みんな独断で処理する。 雨が降って来て、 軒を借りたいという雨宿りの人に、伯父さんが一度差しただけの蛇の目の差し 料を貸す。 知らない人だった。 鼠が出たので、猫を借りたいと来た、お向 かいの近江屋さんには「傘の断りよう」で、「骨と皮、バラバラになったので、 焚き付けにした」と。 隣町の讃岐屋さんが旦那の顔を借りに来たのを、「猫の 断りよう」で「最近盛りがついて家に寄り付かない、どこかで海老の尻尾を食 ってきて、家の中で粗相をして困る、マタタビを食わして、寝かしてある」と 断る。 驚いて、伯父さんが羽織を着て謝りに出かけた。

 「ちょっと、ごめんやす。わて京橋中橋の加賀屋佐吉方から参じました」と 早口の上方弁でまくしたてるご存知の口上。 「先だって仲買の弥市を以て取 次ぎました道具七品、祐(示右)乗宗乗光乗三作の三ところ物、刀身は備前長 船の住則光、横谷宗珉(王民)四分一拵小柄付の脇差、柄前は埋れ木じゃと言 うてでございましたが、ありゃあたがやさん(鉄刀木)で木が違うて居ります さかい、ちょっとお断り申し上げます。自在は黄檗山錦明竹、ズンドの花活に は遠州宗甫の銘がござります。利休の茶杓、織部の香合、のんこの茶碗、古池 や蛙飛び込む水の音。これは風羅坊(芭蕉)正筆の掛物、沢庵木庵隠元禅師貼 り交ぜの小屏風、あの屏風は、私の旦那の檀那寺が兵庫にござりますが、その 兵庫の坊主の好みまする屏風やさかい、兵庫にやって兵庫の坊主の屏風にいた しまする、こないにお伝え願います。」 面白えなあ、十銭やるから、もう一遍 やれ、伯母さん面白いよ、表によくしゃべる馬鹿が来た。 お家はん、ですか?  お湯屋さんは、二丁ばかり先。 うふふふふ、お茶淹れてらっしゃい。 これ に叱言言っていて、二、三、聞き逃したので、もう一度。 帰っちゃ駄目、馬 鹿野郎ーーッ。

 旦那が帰り、女房のお光が報告するのだが…、「仲買の弥市さんが気が違って、 遊女は(別の)客に惚れたといい、その遊女をずん胴斬りにして、ノンコのシ ャア、沢庵と隠元豆でお茶漬けを食べて、長船に乗って遠州から兵庫へ行って、 屏風を立てて、坊さんと寝て、その挙句に古池に飛び込んだんだそうで」。 そ りゃあ大変だ、弥市には道具七品を買うように、手金が打ってあったんだ、買 ったかな。 いいえ、買わずに飛び込みました。

 小権太、このスタンダード・ナンバーをしっかり演って、とてもよかった。