白酒の「喧嘩長屋」2014/07/02 06:32

 見回して、満席といっても過言ではない。 様変わり、入門した頃は、どん 底だった。 大劇場に入るふりして、小劇場に入ったりした。 今は、落語が 好きというと、素敵ね、と言われる(それほどでもないか)。 立見も出て、夢 のよう。 寄席の満席など、見たことがなかった。 今、完売御礼が出る、出 さない会もあるけれど。 男女比が変った。 前は9割9分が男、女の人がい ても女もどき、男も思い詰めたような方ばかりで、死んだようだった。 今は 女性が6~7割、楽しみを他人に紹介したがる。 だまされたと思って、落語 に行ってみなさい、と。 中には、だまされたと思う人もいる、かもしれない けれど。 男の人は、俺だけの談志…、客は増えない。 大相撲も、遠藤など で大人気。 満員御礼の基準、9割5分だった(寄席の大入り袋と同じ)。 若 貴の時代からモンゴル相撲の時代へ。 ある時、7割5分に変った。 寄席は しっかり満員、立見の人が背伸びして覗くようにして見ている。 そんなにし て見るほどほどのことはやっていないが。 寄席とホール落語、特性が違う。  120%の満足度で、しばらく落語はいいね、となってはまずい。 まあまあだ ったが、明日も行くか、2割ほど不満を残す。 その加減が、難しい。

 目の前がやけに座高の高い人、アフロ・ヘアだったりする。 隣に、バカに 感心する方がいたり、自由だけれど。 高座から、荷物を探っている方が気に なる。 小分けしたビニール袋をガサガサやっていて、10分ぐらいかかって、 やっと見つけたのが、プログラム。 今から、読むか。 肘掛の取り合いをし ている。 0・5人前を譲り合えばいいのに、俺は両方と頑張る人がいて、けっ こう困る。 よくやるのが、二の腕を密着させ、じっとり。 じわじわ押す。  偶然を装って、陣地を取り戻す。 何で、こんなことで怒るのか、人間の面白 いところだ。

 「おい、おい」、呼んでんだろ。 アタシ?「おい」って名前じゃないよ。 お 光よ。 用はなかった。 用もないのに呼ばないでよ。 いいだろ、夫婦なん だから。 今日は蒸すね。 私のせい? 怒ってるのか。 怒ってないわよ、  何なの。 日本はどうなっちゃうんだろ。 知らないわよ、私にどうしろって いうの。 ハッ、ハッ、ハッ、ハックション、ショア、ショア。 ショア、シ ョアって、何よ。 気持がいいだろ。 聞いてるほうは、ムカムカすんの。 ハ ッ、ハッ、ハ! 何、今の? ちゃんと我慢してよ。 八つ当たりすんな、こん ちくしょう。 気持をぶつけているだけよ。 誰のおかげで、飯食っていると 思ってるんだ。 私が出れば、もっと稼げるんだ。 それを云っちゃあ、駄目 だ、張っ倒すぞ。 ぶってごらん。 バチン。 か弱い女に、何すんの。 バ チ、バチ、バシ、バシ…。

 八、俺だ(と大家が仲裁に入る)、お光さん、八公待て、手を下ろせ。 訳を 話しな。 何、クシャミがもとだと、馬鹿か、お前たちは。 八公、お前が我 慢しろ。 謝れ、悪うござんした、と。 何を、スケベ大家、女の肩ばかり持 ちやがって、ウチの女房に色目をつかいやがって。 誰が、こんなものに、色 目をつかうか。  こんなものとは、何だ。 バチ、バチ、バシ、バシ…。 大 家と八公が喧嘩になった、誰か仲人(ちゅうにん)に入ってやれ。

 おーおー、喧嘩はやーめてくーださい、私、アメリカの宣教師です。 こん ぐらかって、きやがった。 世界人類みな兄弟、イエス・キリストはおっしゃ いました、右の頬を打たれたら、左の頬を出せ、と。 殴ってもいいのか? OK、 殴って下さい。 バチ、バチ、バシ、バシ…。(右手で左手を叩く) これをや ると、手が痛くなる。

 どんどん、喧嘩が大きくなって、石原慎太郎、プーチン、習近平…、喧嘩好 きが続々と集まって来た。 長屋に入ろうとすると、入口に、「満員御礼」。

 白酒は、暗い噺の間にはさまって、短く軽い噺という得な役回りだったが、 爆笑、また爆笑。 頭の切れがいい。 大物になる予感がする。