柳家右太楼の「夏どろ」2014/07/26 06:36

 梅雨明けして、大暑の23日、蒸し暑い日だったが、第553回の落語研究会 だった。 「ぷろぐらむ」は、柳家のオン・パレードとなった。

「夏どろ」          柳家 右太楼

「植木屋娘」 鈴々舎風車改メ 柳家 三語楼

山崎雛子作「孫、帰る」    柳家 喬太郎

            仲入

「猫久」           柳家 花緑

「鰻の幇間」         柳家 小満ん

 髪の毛が前に少し垂れている柳家右太楼、来年3月21日、十人揃って真打 になると言って、万歳をする。 今日も十人集まって相談したが、まとまらな い。 スローガンが「質より量でがんばろう」と決まっただけ。

 芝居や講談と違い、落語の泥棒は、大したのはいない。 石川五右衛門の弟 子で石川2・5、鼠小僧の弟子で膝小僧…。 夏は泥棒が活発に働く季節。 寝 苦しいので、表裏を開け放ち、閉りをしていない。 長屋の突き当りが崖で、 その一番奥の家の戸が開いている。 泥棒が中に入ると、土間で何か燃えてい る、どんぶりに板切れを入れて燃している。 蚊燻しのつもりか、危ねえな、 火事になるじゃねえか、と消す。 汚たねえ家だな、でも親分が言っていた、 そういう家の方が、床下に穴を掘って金を隠してあったりするって。 オッと …、落し穴じゃないか。 何だ、家中、畳がないのか。 寝ている奴がいる。  おい、起きろよ! 起きてるよ。 何だ、俺が入って来たのに、気が付いてた のか。 ずっと見ていたよ、どかどか入って来やがって、足で探り探り入って 来るもんだ。 火を消したのも、見ていたのか、危ねえじゃないか。 どん詰 まりで、蚊が多いんだ。 出せよ! 何を? 銭に決まっているじゃねえか。  銭はない。 出せよ! 金を! オラ、盗っ人だ、泥棒だ! 馬鹿、大声を出 して、壁が薄いんだぞ、この長屋、腕っぷしの強い連中が入っているんだ、車 力に元相撲、好きなだけ大きな声を出せ、袋叩きにあうぞ。

 出せよ! きれいだな、ピカピカ光っている。 突き刺すぞ、今まで何人手 にかけたか、わからねえお兄イさんだ。 本当に殺すのか、それもいいか、死 に方がわからなかったんだ、殺せよ。 人間、命を粗末にしちゃいけねえ、体 の具合でも悪いのか? 商売は大工で、腕もそこそこなんだが、悪い病いがあ る、博打だ。 初めは金がみるみるうちに増えた。 だが、どんどん取られて、 終いには道具箱を質に入れて、全部取られちゃった。 殺すっていうのは、渡 りに舟だ、一思いに殺せ。 何で博打なんかに手を出すんだ、人間こつこつ働 くことに価値がある。 道具箱は、いくらで質に入れたんだ。 5円。 大工 の命じゃねえか、5円で請け出せるんだな。 ほら、これ、お前にやるから、 持ってけ。 これ、くれんの、悪いね、親戚でもねえのに、やっぱり、けえす よ。 質屋に入れたのは三月も前の話で、利息が出る、殺せ。 大きな声を出 すな、利息はいくらだ。 1円50銭。 その質屋、高えな。 悪いな、有難く 貰っとくよ。 前へ出て、俺の体、さわってくれねえか。 何だ、裸か、お前。  半纏、腹掛けも、質屋だ。 いくらだ。 利息込みで、2円。 出せばいいん だろ、何でこんなところへ入えったのか。 俺は三日三晩、何も食ってない。  50銭やるから、米買って食え。 俺は、おかずっ食いなんだ、やっぱり返えす よ。 出すよ、出すよ。 さっき、50銭出すんで財布ふった時、隅の方をつま んでいたろ。 これで、みんなだ、一文無しだ。(と、財布を投げ出す)

 いい奴に会ったんだ、と思って死ぬから、一思いにやってくれ。 そんなこ とは言うな(襟に縫い込んだのを破って)畳んであった一円札を出す。 本当 に、一文無しだ。 悪いな。 これで、帰えるからな、騒ぐんじゃないぞ。 右 へ行け、左には交番がある。 でも、捕まるようなことは、何もしていない。  おい、泥棒、陽気の変り目になったら、また来てくれ。

 右太楼、真打昇進も当然と思わせる、なかなかの出来だった。