三遊亭萬橘の「開帳の雪隠」 ― 2023/10/08 07:00
どうもありがとうございます、これから私は落語をやります、と萬橘は始めた。 権太楼師匠が、ちゃんと出てきます。 この噺を「百年目」と比べると、そんなに落差をつけなくていいと思う。
旅に出て、土地土地で見分を広める。 札幌で、二回公演があった。 私はいつも着物なのだが、噺家と客が同じエレベーターに乗る。 キャリーバックを引いて、乗っても、誰も話しかけてこない。 私がボタンを押したので、ちょっと変わったエレベーターボーイとでも、思ったのだろうか。 昼席の最初に、エレベーターで誰も声をかけて来ませんでした、と言った。 昼席が終わって、外出したら、おばさんが声をかけてきた。 「さっき落語やった人でしょ。声をかけたからね」って。
洒落たホテルで、メディテーションルーム、瞑想室というのがあった。 浴衣で行く。 ふだん、そんなに静かにすることはない。 ピーーン、ポーーン、パーーンみたいな音がして、霧が出ている。 丸い椅子に座る。 隣に外国人のカップルがいて、手前にいた男の方が、オナラをした。 ブッブー! パッと見ると、その人が、「シィーーッ!」と。 研究会にふさわしくない話。
大阪に行くと、串カツが食べたくなる。 店員が外国人、東南アジアの人、「おまかせ」を頼んで、ズラーッと出て来た、どれが何だかわからない。 説明してもらうと、これは「シーサーモン」。 海のシャケか、旨い。 携帯で「シーサーモン」を検索したが、出て来ない。 もう一度聞く。 ハイ、何ですか、これ「シシャモ!」。 勉強が大事だ。
猫カフェが流行ってる。 かわうそカフェ、さわれて、滅茶苦茶かわいい。 かわうそは、穴に入ろうとする。 着物の袂(たもと)に入ってくる、あちこち動いて、すごいんだから、かわいい。 かわうそが、カップルの男の子のポケットから、名刺を取り出した。 女の子の名刺だったんで、気まずくなった、その後は知らない。 (萬橘、眼鏡を取る)かわうそ人気、自慢じゃないが、かわうそに走っている。 かわうそが、こんなに気を許したのを見たことがない、と常連が言う。 鳥カフェ、うなぎカフェとなると、残酷になる。 二回公演の二回目の落語、ぜんぜん受けなかった。
お婆さん、どうしたんだい。 お向うの茶店、お客が沢山入っていたから、呪いの声をかけていた。 うちは駄菓子屋なのに、御手水(おちょうず)、雪隠(せっちん)、はばかりを借りに来る。 だけど「おねえさん」と言える人はいない。 何も買わないで、借りに来る。
ご開帳で、大勢人が来る。 いくらか取って、はばかりを貸すことにしよう。 箱を置いて、八文、入る前なら一両取れるけれど、看板に紙を貼って「一垂れ、八文」と出しておく。 それが大繁盛。 お金、山盛り。 いい御弔い代が稼げるかもしれない。 立ち小便に犬、まき散らしながら、駆けて行った。
お向うの茶店、真似するのがうまい。 きれいな手拭、琴、尺八、三味線の音を流し、お土産も出すんで、客をみんなそっちに取られてしまった。 今日、うちに来たのは、三人だけ。 うちも土産をつけよう、「一垂れ、かりんとう二本半」。 それはよくない。 年寄の神信心しかない。 明日早く、弁当をこしらえてもらって出かける。 お婆さん、勘定を間違えないように。 日に三人しか来ないのに、お爺さんも呆けたかな。
お婆さん、はばかりを貸してくれ。 八文、入れて下さい。 雪隠を貸して。 八文、入れて下さい。 はばかり、はばかり、雪隠、雪隠、御手水、御手水…。 お一人様、三分でお願いします、それ以上は延長料金を頂きます。
お爺さんが、やっと帰ってきた。 今日は、急に沢山、お客様が来ました。 お爺さん、えらく御利益がある神様に行きましたね。 私は、お参りなんて行ってない。 どこへ行っていたんですか? 私は向うの店のはばかりで、一日中しゃがんでいたんだ。
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