「ものみな一つの細胞から」2007/10/11 07:36

 『いのち愛づる姫 ―ものみな一つの細胞から』(藤原書店)という絵本があ る。 もともと朗読ミュージカルだったそうだ。 「生命誌」という新しい考 え方を創造し広めた中村桂子JT生命誌研究館館長が、童話作家でミュージカ ル脚本家の山崎陽子さんとともに、生命誌研究館の十周年に制作・公演した。  その時もスライドで使ったという堀文子さんの絵を配して絵本にしたものだ。  きのう書いたミジンコ、ミドリムシやボルボックス、蜘蛛の巣、海に漂うクラ ゲやクリオネ、モルフォ蝶、松ぼっくりなど、堀文子さんが精密な観察をして 描いた絵が、その物語に、ものの見事に合うのだった。

 38億年前、一個の原始細胞が誕生した。 いま地球上に生きる生きものはす べて、私たち人間もふくめ、この細胞から生まれた仲間、親戚だというのだ。  また、人間の大人の体は数十兆個もの細胞からできているが、それらはすべて 受精卵という一つの細胞が分裂してできた。 人間だけでなく、イヌもネコも トリもカエルも、一つの細胞から生まれてくる。 つまり、生物全体を見まわ したときには大昔にできた一個の細胞から生まれているし、一つの固体も一個 の細胞からうまれている。 ともに「ものみな一つの細胞から」なのだ。

 中村桂子さんは、言う。 「一個の受精卵を必ず新しく生じさせることによ って、それまでになかった新しい個体が生まれることが大事なのです。 多細 胞生物はこうして、ていねいに、ていねいに一つずつの個体、かけがえのない たった一つの個体を生み出しています。 手抜きをせずに、私たちの誰もがこ うして生まれてきたのです。 長い長い歴史を背負っていること、このように ていねいに生まれるのだということを考えたら、ていねいに生きないではいら れません」