志ん太の「やかんなめ」2008/01/30 07:50

 29日は、第475回落語研究会。

「やかんなめ」    古今亭 志ん太

「長短」       柳家 花緑

「二番煎じ」     春風亭 一朝

             仲入

「時そば」      瀧川 鯉昇

「宿屋の富」     五街道 雲助

 わが「落語」ファイルを検索したかぎりでは、志ん太は三回、落語研究会に 出ている。 2003年7月「あくび指南」、2004年5月「古手買い」、2006年4 月「権助魚」で、それぞれ、もみあげを伸ばした出ッ歯の北島康介、巨人軍の ローズ、ベッカム頭というよりビリケン頭でもみあげは巨人軍で売出し中の矢 野に似ている、と書いてあった。 評は、面白くない、きたないので床屋に行 け、おかしみに欠けまだまだ、と厳しい。 今回は黒紋付に薄茶の袴、鶏冠頭 に、鋭い目、高い声で出て来た。

 「やかんなめ」は、聞かない噺だ。 「やかん」や「なめる」なら、よく聞 く。 ある御大家のおかみさん、あの「持病の癪(しゃく)」という、たいへん な癪持ちなのだが、普通の癪の「合い薬」といわれる、男のマムシ指(親指) で指圧したり、下帯(ふんどし)で締め上げて治るというのではない。 やか んをなめると、とたんに治る。 女中を二人供に連れて、向島の原中に梅見と 洒落て、癪を起こす。 そこへ、向うからこれも供のベクナイ(よく笑う男) を連れた年の頃は六十をちょいと出たお武家がやってきて、この人がやかん頭。  「お願いでございます、どうぞお助けを、お力をお貸しくださいませ」と、な る。 いろいろやりとりがあって、女中が主人のためなら手討ちも覚悟と分か り、その心意気に武士が感じる。 べろべろべろべろべろ…。

 爆笑ものの噺のはずだが、大声で懸命にやるわりには、面白くなかった。 あ とで出た脱力系の鯉昇のおかしさとくらべて、枝雀がよく言っていた「笑いは 緊張と弛緩」というのを思い出した。 押すだけではだめなのだ。 道は遠い。  この評価には、断じて、だれやらの頭の問題は関係していない。