権太楼の「百年目」2008/03/06 07:43

 柳家権太楼、痩せたようだ。 もっと脂ぎっていたのに。 池袋演芸場で胃 が痛くなり、近所の薬屋に飛び込んで胃薬(飲むやつ…液体)を買った話をし ていたが、せっかく脂の乗った時期を迎えているのだから、気をつけてもらい たいものだ。

 仲入後は「百年目」の権太楼ひとりだけ、十分時間をかける場を用意しても らい、それを期待した客席も満員で熱気があった。 長井好弘さんの解説によ ると、去年の夏に「百年目」をやるようにといわれて、円生、米朝、文枝、志 ん朝と、出来る限りのテープを聴いたそうだ。 円生師の旦那は厳しい、番頭 を許していない。 米朝師は、自分が大店の旦那然としている。 志ん朝師の は親切な旦那、師そのままに気を遣いまくる、と。 

 「百年目」は大店の番頭、堅くてしょうがない治兵衛(43・来年別家のはず) が、実は旦那に内緒の遊び人で、向島で芸者、幇間総揚げの花見、大陽気のま っ最中、旦那と鉢合わせしてしまう噺。 つい「ごぶさたをしております。お 久しぶりでございます。おかわりございませんで」と、挨拶してしまう。 そ れを翌日、旦那に、ちょっと腑に落ちないことがある、と訊かれることになる。

 翌朝、旦那に呼ばれるまで、治兵衛はあれこれ悩んで一睡もできない。 旦 那が嫌味を言って来るだろうというケース、円生の口調でそれをやった権太楼 の工夫は、面白く、成功した。

 権太楼の旦那は、おおむね寛容で、見るべきところはきちんと見ている。 情 理を尽くして説く、いい旦那だった。 いつも見てくれと言われていて見なか った帳面を、一晩中かけて見たが、毛ほどの穴も開いていなかった。 いい番 頭さんになった、えらい人になった、と褒めて、十一で奉公に来てから手をか けたいろいろの苦労話をする。 旦那(檀那)の語源から、百栴檀の木とナン エン草の持ちつ持たれつの関係に及び、旦那と番頭の関係は、それだという。  番頭と店の者の関係もそうだ、店の者にお前さんの露をたくさん落としてやっ てほしい、と旦那の方が頭を下げる。