小満んの「宮戸川」(下)の(ハ)2009/12/08 07:29

 傘を取りに行った小僧の貞吉が、戻ってみると、お花がいない。 もし、小 僧さんと、菰をかぶり、腰の立たないいざりが、事の一部始終を見ていて、川 沿いのお薬師さんの方でも探してみたら、と言う。 見つからないので、店に 帰って半七に話し、さんざん探し回ったが、その日は暮れ、霊岸島に言って、 お役人にも届けたが、お花の行方は杳として知れなかった。

 はや一年が経ち、お花のいなくなった日を命日として、橋場の寺で一周忌の 法要を営んだ。 旧暦6月の半ば、暑いので、半七はひとり山谷から舟で堀へ 出、向両国まで帰ることにした。 船宿の女将が、屋根舟は出払っているが、 猪牙(ちょき)ならあるといい、何か一口というので鮑の水貝にする。 する と、船頭の弟分で、少し酔った正覚坊の亀というのが、一緒に乗せてくれとい う。 半七は、酒の相手にと、乗せてやることにする。 船頭は粋な稼業だか ら、もてるだろうと話を向けると、あっしや兄ィは、このご面相だからもてな いといい、お慰みに粋な話をと、一年前のことを語り出す。

 兄ィと二人、本所の旗本屋敷の賭場でさんざん取られた帰り、雷がゴロッと 鳴って、水戸様の屋敷のあたりに落ちた。 普賢寺の所まで来たら、きれいな 女が倒れていて、多田の薬師の石置場に連れ込み、なぐさんで…。 これで様 子がからりと知れた、去年の6月7日。 ふびんと思えど宮戸川、どんぶりや った水煙り。

 「もし、あなた、あなた」と、ひどくうなされていた半七が、お花に起こさ れた。 「ただいま戻りました」 「途中、妙な奴に会わなかったか」 「い いえ」 「小僧が傘を取りに戻ったところまでが本当で、あとはそっくり夢か」  「夢は五臓の疲れといいますから」 「いいや、小僧の使いだ」

 「宮戸川」という題、(上)だけでは何だかわからないが、(下)までやると、 隅田川の古称だということが判明する。 (下)は一見、いやな、暗い噺だか ら、(上)だけでやめる理由がよくわかる。 でも最後の「夢」で、さっぱりと 救われた感じになったのは、小満んの芸だろう。 三悪人を二人にしたのも、 効いているのかもしれない。

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