桃月庵白酒の「安兵衛狐」2009/12/28 07:05

 クリスマス・イブなので、桃月庵白酒もイルミネーションの話をした。 住 いを明るく飾ると、受け取り方はさまざま。 やめてくれ、と文句をいってく る人もいて、もめ事になる。 子供が「サンタさんの目印だから」、相手の男「サ ンタさんはお父さん」とやって、子供が泣き出す。

 「安兵衛狐」、初めて聴いた。 向う三軒、こちら二軒の長屋。 二軒の方に、 「へんくつ」源兵衛と、「ぐず安」の安兵衛が住む。 源兵衛、安兵衛とは仲が いいけれど、向う三軒とは仲が悪い。 三軒から亀戸へ萩の花見に行かないか と誘われた源兵衛、行きたいくせに「へんくつ」だから断わって、瓢箪に酒を つめ谷中に「ハカ」を見に行く。 でかい墓の前で酒を飲む。 どんな女か、 顔見てえな、と、さしつさされつ、ついには墓石に抱きついたりする。 横を 見ると、少し掘れていて、さぐると、コツンと骨に当たった。 酒をかけ、供 養して帰宅。 夜中「ごめんくださいまし」と、きれいな女が訪ねて来る。  谷中から、回向で浮ばれたお礼、そばに置いていただきたい、と。 へんくつ だけど、恐がりの源兵衛、俺いいよ、というけれど、家に置いてみると、これ が働き者で、いいかみさんになった。

 隣の安兵衛、うらやましくて、谷中に行けばと、酒持って出かける。 罠で 子狐を捕まえた男がいて、訊けば、皮を剥ぐというから、逃がして下さい、売 ってくださいと、二分を一分に値切った。 帰りがけに、お稲荷さんの鳥居の 横から若い娘が出て来て、「そこへ行くのは安兵衛さん、私はおこん、生れは王 子。 奉公先を出て来て、泊る所がない。 以前から安兵衛さんをお慕いして いました。 家に置いていただければ、「コン」な嬉しいことはない」と。

 三人組、「へんくつ」と「ぐず安」が、かみさんをもらったが、どうもおかし い。 源兵衛のかみさんは腰から下が透けて見えない。 安兵衛の所は陽が当 って雨が降っている日が嫁入りだったし、目がきょとんとしていて、耳が立っ ている。 キツネが化けているんじゃないか、もしかしたら安兵衛もキツネで はないか、と三人で隣町の安兵衛のおじさんを訪ねる。 「いいお天気で」と 挨拶すれば、「私は八十三だ」と、話が噛み合わない。 「安兵衛さんは来ます か」「安兵衛は「コン」」「あ、おじさんもキツネだ」

 白酒の勉強努力は買うが、あまり聴かない噺はつまらないという常識に、ま た一例を加えた。