池井戸潤著『鉄の骨』を読む2010/08/05 07:08

 書評を読んだからなのだろうが、何で読みたいと思ったのか、忘れてしまっ た。 買うほどの本ではないと思い、図書館に予約した。 それから半年ぐら い経ったか、忘れた頃に、順番が来た。 池井戸潤著『鉄の骨』(講談社)であ る。 ちょうどNHKが小池徹平主演の連続テレビドラマにして放送している 最中だった。 テレビは見なかった。

 談合の話である。 富島平太は、大学を卒業して中堅ゼネコン一松組に入り、 現場を三年経験したところで、本社の業務課(談合課)に転勤になる。 大学 のテニスサークルで一緒だったガールフレンドの野村萌(25)は、一松組のメ ーンバンクの白水銀行にいる。 四年越しの付き合いだ。 萌は、支店の融資 課のエリート園田俊一(29)から、担当している一松組の業績や資金繰りの厳 しいことを聞いている。 平太とは居酒屋で焼酎だが、園田とはレストランや バーでワインを飲む。 確信は持てないながら、平太がサラリーマンとして、 業務命令なら談合もせざるを得ない、必要悪だと言い、「お前だって、金持ちの 年寄りにうまいこといって投資信託とかなんとか売ってるじゃんか」などと言 うものだから、二人の気持は離れて行く。 萌の気持は、園田に傾いてゆく。

 一松組の業務課は尾形常務の直轄、その尾形にダービーに誘われた平太は、 東京競馬場の貴賓室で三橋萬造という同郷佐久の男を紹介される。 三橋は大 手ゼネコン山崎組の顧問で、天皇とよばれる調整(談合)のまとめ役だった。  三橋の妻は、旧建設省のドンから民政党の政治家に転身した道路族の大物、城 山和彦の妹だ。 大手ゼネコンの役員クラスを招いて三橋が自宅で催す茶事に、 常務は平太を一松組の代表として送り込む。

 三橋は平太を可愛がり、「サラリーマンは部品だが、単なる部品じゃない。部 品といえるのは、仕事という目的に限っての話であって、同時に私たちは人間 だ。サラリーマンである以前に人間なんだ」、自分は「設計図にない部品の役割 を担ってきた」、自分が必要とされるのは「競争の底が割れたときさ」と言う。  「調整に失敗し、大手ゼネコンが倒産し、傘下や下請け企業が路頭に迷うと、 社会に与えるダメージは相当なものになるだろう。本当の制度改革が行われる とすれば、それからだ。日本という国は、一度痛い目に遭わないとわからない んだ」とも。

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