「今日もていねいに」『暮しの手帖』70号から2014/06/11 06:29

 『暮しの手帖』は、松浦弥太郎さんが編集長になってリニューアルしてから 8年目になるそうだが、部数は右肩上がりを続け、昨年暮には8年で最も多い 部数になったそうだ。 きょうの暮らしに役立つこと、皆がよく知っている話 題を深く掘り下げることを、二つの柱にしていて、それをうまく読者に伝える には、もっと他にいいアイデアや方法があるのではないかと、前向きに疑って、 たえず考え直しているという。 「頭つかわず心をつかう」という言葉を、若 い人や、会社の人たちに伝えていると、朝日新聞の『リレーおぴにおん』「私の 必殺技」で語っていた(4月20日朝刊)。 

 有難いことに『暮しの手帖』の社長は新聞部の後輩なので、読ませてもらっ ている。 最近の70号(6-7月号)から、いくつか。  紀行 「今日の買物 日田へ」(文・写真 岡本仁)。 大分県日田は、中津の 隣だから興味があるが、行ったことはない。 三隈(みくま)川という広い川 のほとりの町だということが、最初の写真でわかる。 シネマテーク・リベル テ(自由)という小さな映画館を引き継いで5年になるのは、福岡でサラリー マンをしていた原茂樹さんだ。 映画館のカフェで、小鹿田焼(おんたやき) のカップが出る。 三苫修さんの作品とわかり、その角皿と、きじ車を買う。  原さんに誘われ、三苫さんの工房へ行き、轆轤を使わず型で器をつくっている のを見る。 独学で習得した木版画から油絵に転向したという画家、宇治山哲 平の絵も不思議な絵だ。

 「わたしの家」。 父が高等遊民だったという臼井久美子さん(81)三美子 さん(78)姉妹の、昭和12年に建てられた横浜根岸の海の見える木造平家の 和風建築。 長押(なげし)、鴨居、濡れ縁は、知っていたが、供待(ともまち)、 駒寄せは、辞書を引いてしまった。 「家は住まわせてもらうもので、器にあ わせて住んでいくものだと、父とこの家に教わりました。」

 「随筆」。 斉藤由香さんの「緑、赤、白色のメニュー」。 母(北杜夫夫人) は、結婚前にハンブルクで暮したことがあり、ドイツの黒パンやチーズ、ソー セージ、サラミの味を覚えて帰国した。 食卓の思い出は洋食が多く、朝食は ハチミツがたっぷりのフレンチトーストやオニオングラタンスープ、夕食はミ ネストローネスープとラザニア、ミートロープなど。 そして必ず「緑色、赤 色、白色を食べなければダメよ」と言う。 緑色はほうれん草のソテーやブロ ッコリー、赤色はトマトサラダや人参のグラッセ、白色は白菜のソテーやじゃ がいもスープなど。

 同。 近藤富枝さんの「宿願の継ぎ紙展を終えて」。 継ぎ紙(つぎがみ)は、 千年前に行われたクラフトによる料紙装飾。 『本願寺本三十六人家集』が唯 一現存する作品という。 近藤さんたち同志20人は、35年前からその研究と 実作を志したが、師はなく、草木染や箔の切り方、墨流しなどの基礎的な技法 を、それぞれの専門家に学んでいった。 継ぎ紙は、染め紙と文様のある唐紙 を直線で切る「切り継ぎ」、曲線で破る「破り継ぎ」、五枚の紙をグラデーショ ンにしたものをずらして画面に挿入する「重ね継ぎ」の三つの技法がある。 特 に「重ね継ぎ」は、さまざまの秘術が必要だった。 三月初旬、青山で、その 研究と実作の到達点を示す「杳(はる)かなる美への旅」展が開かれた。

 松浦弥太郎さんは、編集後記「編集者の手帖」の終りにいつも書く。 「今 日もていねいに」。

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