映画『丘の上の本屋さん』2023/04/11 07:00

 町の本屋さんが、どんどん少なくなっている。 この15年で、約40%減少しているという。 先日は、本屋のない地域があるという地図を新聞で見た。 全国の市町村1741の内、約26%になる456の市町村に本屋がないそうだ(2022年9月現在、出版文化振興財団(JPIC)調べ)。

 『丘の上の本屋さん』という映画が公開中だ。 紹介や批評を読む。 イタリア中部、アブルッツォ州テーラモ県にある人口5千人に満たない小さな村の、緑豊かな田園風景を見渡せるテラスに面した古書店が舞台。 店主のリベロ(レモ・ジローネ)は、移民労働者や教授、家政婦など個性あふれる客を相手に日々対応している。 買うより、売りに来る客が多いようだ。 ビジネスライクではない人間味あふれる会話は、リベロの人柄を映し出す。

 リベロは、ある日、店先の棚を見つめる移民の少年エシエンに気を留める。 彼は本を買うお金がない。 「読み終えたら返しに来るように」とコミックを渡す。 『イソップ寓話集』『星の王子さま』『ピノッキオの冒険』から『白鯨』などの小説、さらにはアフリカからの移民である彼のルーツをたどるノン・フィクションまで、次々に貸し与えていく。 エシエンはリベロに感想を話し、リベロはさまざまな物の見方や考え方を授ける。 二人の対話は簡潔だが、少年は大人との対等なやり取りを通じて、多くのことを学んでいく。 それが、この映画の大きな見どころだという。

 リベロとは、イタリア語で「自由」を意味する。 リベロは、国粋主義者の客に対して、相手の主張を否定せず、だが、イタリアの歴史に向き合う一冊を静かに手渡す。 映画には発禁扱いされた本の書棚をめぐるエピソードもあり、リベロを演じたレモ・ジローネは朝日新聞の細見卓司記者に、こう語ったという(3月10日夕刊)。 「自由というものには『本を読む自由』もあるのです。独裁国家が何をしたかといえば、本を焼くことでした。自由が本に詰まっているから。過去の偉人が書いた本から学び、自らの考えを自由に開くことができる。文化とは自分の頭で考えることを教えてくれるものだと思います」