柳家さん喬の「ちきり伊勢屋」下2023/12/13 06:16

 藤蔵、向えの家に「忌中」の札がかかっているが、誰が死んだんだろう、と 前のサガギン、佐賀屋銀次郎。 ウチの旦那が、明日亡くなるはずで。 つまらない座興だ。

 2月15日、鶴次郎は昨日から酒を飲んでいる。 棺桶には、窓や腰掛まであるのか、広々していていい、善さん、お前も一緒に入らないか。 酒の酔いもあって、寝込んでしまう。 鶴次郎様、施しを受けた人たちが、列をつくって、手を合わせています。 みんなに挨拶しようかな。 そこで静かにしていて下さい。

 みんなでかついで、深川の報徳寺へ。 大勢の読経か、また寝込む。 旦那様、鶴次郎様は、亡くなってしまったのか。 みんなが、ワッと泣き出す。 一人の芸者が「ちきり伊勢屋!」と声をかける。

 墓守が、棺を埋めようと、土をかける。 バラバラ、バラバラ。 うるさいね、アッ、痛い! 私は死んでいない、両手を突っ張って、棺のフタを持ち上げる。

 額に三角の布、白無垢で、前の花屋へ。 驚く爺さん、婆さんに、白無垢とボロい着物でもいいからと、替えてもらう。 お堂の下で、二、三日、どこへ行くあてもないので、江戸の町を歩いて行く。

 鶴さんじゃないか、生きていたのか、棺桶から抜け出したという噂は聞いたが。 吉原に連れて行ってもらった、幼馴染の清ちゃんだった。 死ななかったのか、よかった、よかった。 俺は勘当になって、品川のいろは長屋にいる。 よかったら、そこへ来ないか。 こんな乞食みたいななりでというと、みたいでなく立派な乞食だ。

 白井左近が、江戸所払いになって、高輪で大道易者をやっている。 白井左近のおかげで、こんな乞食のようになった。 もう一度、観てもらいたい。 「天庭(額)に「コッキ」(?)が消えている、一点の曇りもない、不思議だ。人の命を助けやしませんでしたか」。 聖天の杜で助けた。 それでわかった。 これは少ないが、全財産をお前にあげる。

 清ちゃん、宿賃だ。 ごめんよ、大家さんに家賃が払える。 ウチの長屋にいた駕籠舁きが、家賃が滞って駕籠を置いていった、お前たち二人で、真っ当な形をして駕籠舁きをしたらどうだ。

 すまねえ、品川の土蔵相模まで行ってくれ。 善さんじゃないか。 旦那、鶴次郎様で、やっぱり生きていなさった。 みんなで、手分けして探していたんです。 幻の鶴次郎、というあだ名で、今どこにって。 この羽織は、鶴次郎様に頂いた羽織で、質に入れてくれば、かなりの額になるはず。

 質屋に行くと、これは受けられない、盗んだ物は駄目、おこもさんが持つような物じゃない。 盗っ人呼ばわりされた、帰ろう。 もし、手前の主人が、お待ち下さいと。 先ほどは手前どもの店の者が、失礼しました。 あなた様は、ちきり伊勢屋の鶴次郎様でしょうか。 鶴次郎ですが。 では、お美代、間違いない、あの方だよ。 お久し振りです。 私は日本橋白木屋のゆかりの者ですが、姪のお光に婿を取りまして白木屋を継ぎ、2月15日に源右衛門が死にました。 父は、急な病で、あっという間に、これであの方に恩が返せると申しまして、嬉しそうにみまかりました、この手紙を手に持って。 父は喜んで死にました。 この叔父は、私の親代わりで。 鶴次郎様、いかがでしょう、私には後継ぎが無い、このお美代を妻に娶って、この家に「ちきり伊勢屋」の暖簾を掛けていただく訳にはいきませんか。 大暖簾は、サガギン、佐賀屋銀次郎が預かっていた。 再興を果たした「ちきり伊勢屋」は、福を呼ぶ「ちきり伊勢屋」と江戸中の評判になる。 鶴次郎お美代の夫婦は、伊勢参りに出かけ、白井左近に巡り合う。

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